天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

オレンジの夜景 - 2001年07月13日(金)

「やっぱり会える人じゃなきゃだめ?」
ってあの人が言った。
「僕のこと、恨んでる?」
ってあの人が言った。
「僕のどこが好き? なんでそこまで想ってくれるの?」
ってあの人が聞いた。


きみがね、仕事のことで困ってて弁護士にまで会いに行ったりして大変なのに、昨日あんな時間に電話してもちゃんと励ましてくれて嬉しかった。メールでも励ましてくれて、ほんとに嬉しかった。きみのそういうとこが好きだよ。

きみが何も心配しないで働ける病院で仕事が見つかるまで、僕がずっとついててあげたい。だから出来るだけ時間作って電話してるんだけど、それでも足りない? 

無理に優しくしてなんかいないよ。僕はきみに優しくしたいだけ。ちゃんと安心して働ける仕事が見つかったって、変わらないよ。僕はずっとここにいるよ。ずっときみが大事だから。


会える人じゃなきゃだめなんじゃなくて、あなたじゃなきゃだめなの。あなたに会いたいの。こんなに好きなのに会えない気持ちなんか、あなたにはわからない。あなたはいつだって好きな人に会えるんだもの。恨んでなんかいない。何を恨むの? 恨まれるのが怖いの? どこが好きなんてひとことじゃ言えない。好きな理由をいっぱい見つけられるくらい、わたしは淋しいの。

あの人は大きなため息をひとつずつつきながら、わたしの言葉を聞いていた。


「月曜日に電話するね。」
「月曜日まで待てない。」
「困らせないで。メールするから。」
「今日はデートなの?」
「今日は会わない。」
「明日は会うの?」
「明日は会う。」
「ずっと?」
「ずっとって? ずっとじゃないよ。朝仕事があって、そのあとちょっと会って、夜はまた仕事だから。なんでそんなこと聞くの? 聞いたら辛くなるだろ?」
「聞いても聞かなくても辛くなる。」
「またそんなこと言う。」
「あなたが彼女といるとき電話する。」
「・・・するの?」
「うん。」
「・・・じゃあ、電話して。すればいいよ。」
「嫌いになっていいよ、こんなことばっかり言って。」
「嫌いになんかならないよ。」
「嫌いになったって、好きでいてくれたって、おんなじことだもん。」
「なんで今日はそんなに困らすの? 僕のこと困らせて嬉しい?」
「嬉しい。」
笑い出したあの人が言う。
「ねえ、僕の負けだよ。だからもう意地張らなくていいよ。泣かないで聞いてよ。好きだよ。」


わたしの負けだよ。いつだって、いつだって、いつだって。


今日は星がきれい。でもあの街の星はもっときれいだった。40分も車を走らせたら、街中を見下ろせる展望台のある山に登れた。星屑を集めたみたいなオレンジ色の街の灯りが下にどこまでも広がる。空を見上げたら、星が迫ってくるみたいだった。夏でも冬でも、「夜景見に行こうか」って夫がよく突然言い出した。白鳥座もオリオン座も、ものすごく大きかった。星に詳しい日本の友だちに話したら、そんなわけないよって笑われたけど、ほんとに星が大きかった。突然のドライブもオレンジの夜景も大きな星も幸せだった。

帰りたい。帰りたい。あの頃の幸せに戻りたい。オレンジの夜景に帰りたい。

教えて。どうやったら二人の人をいっぺんに愛せるの?


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