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猫になる夜 - 2001年07月14日(土) 体が重くてだるいなあって思ってたら、始まった。あれ、そうなんだっけ? もうそんな日だった? 毎月そう。先月いつだったかなんて、覚えてる必要もなくなっちゃったから。そのためだけに覚えてる必要があるわけじゃないんだけど。 おなかが痛くて頭も痛くて、変な感じで眠くて、夕方からベッドで休んでた。目が覚めると暗くなってて、日本の午後1時過ぎだった。時計を見ると自動的に日本時間に変換される仕組みになってる、わたしの頭。それで時々どっちの時間だかわかんなくなったりもしてる。 午後1時。あの人はきっと今頃彼女と会ってる。お天気いいのかな。外でお昼ごはん食べてるのかな。彼女のところにいるのかな。きっとそうだろうな・・・。いいな。羨ましい。お昼ごはん、作ってあげたいよ。フレッシュのバジルの葉っぱとトマトがたっぷりの冷たいパスタ? オリーブオイルにガーリック効かせて。パスタはやっぱりエンジェルヘアだよね。冷したチリでもいいね。うーんと辛くして。夏らしくズッキーニをいっぱい入れるの。ラズベリーのティーバッグをカノーラオイルに漬け込んで作るドレッシングなんてのも出来るんだよ。ペパーミントティで作るのも涼しげでいいかもね。 パブリックマーケットの写真を見せたら「いいなあ、こういうとこ行きたい。一緒にここに買い物行って一緒にごはん作ろうよ」って言ってた。嬉しかった。わたしの大好きな場所だったから。生活感に溢れてて、活気があって。「こういうとこ、好き?」「うん、好きだよ」「へえ、あたしも大好き。でも日本から遊びに来る友だち連れてってもあんまり喜んでくれないんだよ」「なんでー? 僕は好きだよ。いいじゃん、こういう野菜の売り方とか」。ここにはあんなパブリックマーケットはないけど、スーパーでも野菜と果物がやっぱりあんなふうに色とりどりに山積みされてて、素敵なんだよ。 お料理が好きなあの人は、時々電話で聞く。「それ、どうやって作るの?」って。簡単でおいしいレシピがいっぱいある。一緒に作りたい。一緒に作りながら教えてあげたい。それを彼女に作ってあげてもいいよ。わたしには思い出をひとつくれたらいいから。楽しみにしてたことが出来ないままで、それをその人に取られてしまうのは淋しい。 朝買い物に行って帰ってきたら、いつもはドアの向こう側で鳴いて迎えてくれるチビたちが、ドアを開けたら今日は部屋の奥から飛び跳ねてやって来た。まるでふたりで相談して、いつもと違うことして喜ばせてくれたみたい。かわいい。 チビたちは何をやってもかわいい。キッチンのテーブルからお気に入りのちっちゃい灰皿落っことして割っちゃっても、本棚に飛び乗って遊んでバッサバッサ本を床に落としても、クローゼットに忍び込んで暴れて洋服を毛だらけにしちゃっても。落ち込んでると、ベタベタくっついて甘えて慰めてくれる。電話しながら泣いてると、ふたりでそばに来て「にゃあ」って鳴く。「今のどっち? 何て言ってるの?」って電話の向こうであの人はいつも聞く。 ベッドに入ると、妹チビはどこにいてもやって来て、わたしの腕のつけ根あたり乗っかって寝る。お兄ちゃんチビは自分のバスケットのベッドでひとりで寝てるけど、朝になるとにゃあにゃあ起こしに来る。「おなかすいたー」って。 猫になりたいな。猫になってあの人の肩のところに乗っかって眠りたい。重たいって言われても、しがみついて離れない。ぎゅーっと顔をくっつけて眠るの。一晩だけでいいよ。あの人んちの猫たちが嫉妬しちゃうから。そしてわたしはあの人の首筋に、そうっと一本ひっかき傷を残してくるの。痛くないようにしてあげる。 今日はお兄ちゃんチビも引っ張ってきて、3人で一緒に寝よう。 -
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