![]() |
ふたり、ふたつ - 2001年09月30日(日) おじいちゃんが倒れた。やっとお母さんの容態がよくなって、退院出来たばかりなのに。昨日の真夜中のはずの電話は、12時頃にかかってきて、元気のない声に驚いたらそういうことだった。 これから病院に行くからって言いながら、あの人は気が動転してるふうだった。「なんでこんなことばっかり・・・」って言う。「だめだよ、そんなふうに思ったら。あなたがそんなこと思っちゃだめ」。そう言いながら、わたしの心臓もドキドキしてた。 さっき、電話があった。日本の朝。まだ ICU にいて、検査の結果がわかってないって言った。どうしてそんなにかかるんだろう。日本じゃそれが当たり前なの? まして、ICU なのに。それでもおじいちゃんはちゃんと話が出来る状態だったって言うから、安心した。「大丈夫だよ。しぶといおじいちゃんだからさ」なんて、またあの人は冗談っぽく言う。「ごめんね、心配かけて」って、わたしの心配の心配をする。「ちゃんとごはん食べた?」なんても聞く。バカなんだからって思いながら、「あなたが大丈夫って思ってなくっちゃだめよ。あなたが大丈夫って思ってれば、大丈夫なんだから。ね」って、こんなときにはわたしもちゃんとおねえさんになる。 「わかった。ありがとう」。そう言ってあの人はキスしてくれる。わたしは3回お返しする。「ひとつはおじいちゃんへだよ」「うん、伝えとく」「だめだよ、ちゃんとキスしてあげて。わたしのかわりに」。やっとあの人は笑ったけど、わたしは本気だったのに。「わたしのかわり」は本気じゃないけど。 キスはいつだって、誰にだって、どんな時にだって、魔法なんだよ。 わたしは愛を感じた。あの人をやっぱり愛してると思った。なんでそう思ったのかわからない。ただ、感じた。自分が、とてつもなく、計り知れなく、あの人を愛してると思った。男とか人とか、そういうのを越えて愛してるんだと感じた。あの人の愛も感じた。理由はわからないけど、感じた。絶対消えない。 朝11時頃、ドクターに電話してみた。ドクターはいた。寝てるとこ起こしちゃった。「ごめんね、起こした?」って言ったら「いいよ、いいよ。元気にしてる? 元気? きみは元気?」って何度も聞いた。「メール送ったでしょ?」「見たよ。返事書いただろ?」「あれからまたくれたの?」「きみが Dr. カプリンのこと怒ってて、それからは書いてない」「なんだー」「カード、嬉しかったよ」「その前のも届いた?」「猫のやつ? あれ、かわいかった。ペンギンのもかわいかったけど」。あの人みたいなこと言う。 休暇はブラジルに行くことになったって言った。スキューバダイヴも出来るんだよってはしゃいでた。きみにビキニ買って来てあげるよって言った。ストリングのちーっちゃいやつだからね、着る場所ないかもしれないけどって。 「平気だよ。どこでも着ちゃう。」 「ここのビーチで?」 「ダメ?」 「セルフ・コンシャス過ぎるよ。」 「あなたと一緒だったらいいじゃん。」 そしたらドクターは言った。 「もし僕がきみといたら? そういうこと?」 どういう意味かわからなかった。来年の夏はもうドクターはここにいないから? 7月まではいるはずなのに。それとも、その前に、もう半分のガールフレンドでもなくなっちゃうの? 10ヶ月の間にいろんなとこ連れ出してあげるって言ったじゃん。このあいだ、わたしが泣いちゃったときだって、「今はシリアスな関係は欲しくないけど、つき合ってくうちにそうなるかもしれないから」って言ったくせに。泣いた理由はそれじゃなかったけど。 短い間にぐるぐるぐるぐる考えて、返事出来ないでいたら話題が変わってた。何でもないふりして、わたしは Dr.カプリンの悪口言ってた。 「今週、きみは休みなし?」 「ないよ、ウィークデイは。」 「そっかー。こっちの病院に夜会いにおいでよ。ヒマな日もあるんだよ。」 「どうやって? 入れないじゃん、夜なんて。」 「そっちの病院の ID があれば入れるはずだよ。」 「だって、理由聞かれたら何て言うの? ドクターのアポイントがありますって?」 「ダメだね、夜じゃ。」 会いたいって思ってくれてるの? それとも、わたしが「会いたい」ってメールに書いたから? そんなふうに思っちゃうなんて、もうわたしの負けだね。最初に声かけてきたのはドクターの方なのに。今はわたしが恋焦がれてる? なんか、そういう歌あったっけ。 どうやって、どこまで、好きになってていいのか、わからなくなってる。 -
|
![]() |
![]() |