あっためて - 2001年12月02日(日) 昨日きれいに片づけたはずの机の上が、もうめちゃくちゃ。テキストとノートの山積み。問題集のバインダーが散乱。おまけに最近甘えんぼがエスカレートしてるチビたちがその上を徘徊する。ふたりしてキーボードの前にどっかと座る。キーボードを枕にどてっと横たわる。キーボード打つわたしの手に両手を伸ばしてふにゃあ〜って鳴く。降ろしても降ろしても飛び上がってくる。 今朝あの人の電話で起きた。 たくさん話せるって言ったくせに、またこれからスタジオに練習に行くって言う。いつもこうやってのびのびになる。昨日頑張って勉強したことも、せっかく上手に焼けた洋梨とヘーゼルナッツのタルトのことも、話せなかったじゃん。「今日は何するの?」って聞くから「夕方から友だちんとこに行く」って答えた。 「誰? 友だちって。」 「うふふふふ。」 「誰だよ?」 「内緒。」 「ごはん食べに行くの?」 「まあね。ふふふ。」 「男? 女の子?」 「男。」 「誰〜?」 「ドクター。」 「なんで? なんで? なんで?」 仲直りしたの、って言おうと思ってやめた。 「別のドクターだよ。」 「・・・。・・・ふたりで行くの?」 「そうだよ。」 「ごはん食べるだけだろ?」 「わかんない。だって今日はいっぱい話せるって言ったくせに、約束破るんだもん。」 だって、いつだってそうやって延ばし延ばしにして、電話しかないのに、電話だけ待ってるのに、火曜日はゆっくり話せるなんて言ってどうせまた「これからまた仕事」とか言ってダメになって、「ごめんね」とか言うんだ。「ごめんね」なんかもう言わないでよ。約束破って「ごめんね」ばっかじゃん。バカ。もう嫌い。もう、また別の人見つける。ほかの人のとこに行く。 そう言ってやったら、「別の人見つけないで」ってちょっと悲しそうにあの人は言った。それから「練習やめるよ。もう遅刻してるし。このままきみと話する。話したい」なんて言い出す。「きみが大事だから」って。慌てて言った。「だめだよ、行かなきゃ。嘘だから。うそうそうそ」。だめだよ。そんなこと今まで言ったことないじゃない。いつも仕事が一番大事でいてよ。ちょっと拗ねただけだから。 「嘘だって。女の子女の子。だから早く練習行ってらっしゃい。」 「なんで急に、そんなに焦って切ろうとするの?」 「違うよ。だって練習行かなきゃだめだよ。ほんとに女の子と会うんだってば。」 「ほんとに? じゃあさ、明日きみが仕事に行く前に電話する。それで許してくれる? だめ? それとも泊まってくるの? 帰らないの?」 まだ心配してる。泊まらないよって言ったけど、明日はいつもより早く仕事に行くかもしれない。電話してくれたときわたしがいなかったら? 悲しい? 淋しい? だけどあなたには彼女がいるじゃない。わたしだって、あなたに腕を伸ばしたい。 外は突然冬景色。またやられた。追いつけないよ、変わり身が早いんだから。赤い葉っぱも黄金の葉っぱも嘘みたいに消えちゃって、突然裸んぼうにされた木たちが白い空に腕を伸ばしてる。 ねえ、木は悲しい? 淋しい? でも、雪が包んでくれる日が来るもんね。春になったら芽吹くものね。夏が来たら緑でいっぱいになるものね。ちゃんと約束されてるんだもんね。 誰か別の人、探したりなんかしないよ。 ただね。ただね。急に寒くなったから、あっためて欲しいよ。あなたに。 -
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