天使のバカ - 2001年12月25日(火) 家族のいないクリスマスほど、孤独でみじめで淋しいものはない。 みんなそれを知ってるから、「どうするの? どうするの?」って「みなしご」のわたしを心配してくれてた。 わたしも、どうしようかな、どうしようかな、って思ってたけど、一ヶ月前に同僚のドリーンがイヴのクリスマスディナーにお義母さんちに招いてくれた。 仕事を終えて、迎えに来た旦那さんの車のあとについて、クリスマスライトの飾りつけに灯された家の合間を縫いながら住宅地を走る。どこのお家もそれは素敵なライティングで、年が明けてもしばらく続くこの光景は、毎年毎年わたしにとって一番のクリスマス・スピリット。 ドリーンのちいさな娘のメグと犬のデュークが、抱きついてキスして迎えてくれる。ドリーンがサンタに化けたお兄さんを迎えに行くあいだ、わたしは子どもたちを塗り絵に集中させる役目。「サンタが来たよ、ほら2階に来てごらん」って声に、子どもたちはクレヨンを放って2階に駆け上がる。お兄さんのサンタは、モールの「サンタと写真を撮ろう」のサンタよりも完ぺきで、子どもたちが口をぱっくり開けて、3人同時に手を差し伸べるサンタお兄さんから後ずさりしたのがかわいかった。それからおそるおそるプレゼントをもらう。顔が紅潮して輝いてる。帰って行くサンタにキスをしたら、3人が大はしゃぎで包みを開ける。いいなあって思った。「サンタクロースなんてお話の中だけなのよ。ほんとはいやしないんだから」って、夢も何もない母に育てられたおかげで、わたしはサンタなんか信じたことがなかった。プレゼントは大人になってももらってたけど。今でも送ってくれるけど。 お義母さんのお料理を手伝う。大きなフライパンを片手で振ってブロッコリーとガーリックをぽんぽんフリップさせてたら、みんながすごいって誉めてくれた。調子に乗ってぽんぽんしてたら、髪から洋服からガーリックの匂い浸けになった。 長ーいテーブルにどっさり並んだお料理をわいわい食べ始めた頃には、もう子どもたちはツリーの下に積まれたプレゼントが気が気でなくなってる。ごはんもちゃんと食べないで、大人たちの食事が終わるのを待ってる。そのうち一番お兄ちゃんのダニエルの機嫌が悪くなる。「いい子にしないなら、もうベッドに行きなさい。アンタはクリスマスが終わるまでプレゼントはお預けだからね」っておかあさんに叱られて、ご機嫌斜めがピークになる。泣き出しそうなふくれたほっぺたをむぎゅっと掴んで、「ほらスマイル、スマイル」って言いながら頭を抱いてあげたら、恥ずかしそうにちょっとだけにこっとしてくれた。なのに、手を取って「踊ろう。ワン・トゥー・スリー、ワン・トゥー・スリー」ってワルツの格好を始めたら、足蹴られちゃった。 帰るときにメリークリスマスのキスをしたら、お義母さんが「またブロッコリー、フリップしに来てね」って笑いながら抱きしめてお返しをくれた。飲めないくせに、サングリアを3杯も飲んじゃって、ちょっとふわふわしながら車を運転した。彼女といるあの人のこと考えたくないイヴが終わりかけた頃、「まだ一緒にいるのかな」なんて思ってた。 今日はミズ・ベンジャミンが、親戚んちのクリスマスランチに招いてくれた。 遅刻しそうになって「12時までに行けないよ、どうしよう?」って電話したら、「いいからおいで」って言ってくれた。ミスター・ベンジャミンが教えてくれた道順の、ハイランド通りを「アイランド通り」、ホームローン・アベニューを「ホームランド・アベニュー」と思い込んでたわりに、道を間違えずに12時過ぎには着いた。ナースの格好しか見たことないミズ・ベンジャミンが、すごい素敵にドレスアップしてた。 どこに行っても、誰もお客さん扱いしないでくれるのが嬉しい。 たくさんごはんを食べて、ココナッツのリキュールをクランベリージュースで割ってもらって飲んで、またふわふわしながら帰って来た。 今日は朝電話くれるって言ってたのに、かかって来なかった。 遅刻しそうになったのは、ぎりぎりまで電話を待ってたから。 夜になってもかかって来なかった。待ってるからきっとかけてねって言ったのに。 イヴをあんまり素敵に過ごして、わたしのことなんかどっかに行っちゃったの? ちゃんと拾ってもらって楽しかったはずのクリスマスが、 ちょっとズキズキして終わる。 -
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