ジェリービーンズが来た - 2002年03月31日(日) 街の中に桜の木なんかないと思ってたら、 病院の周りにあった。 アパートの赤い煉瓦に枝の茶色が紛れて気づかなかった。 ごちゃごちゃうるさく並ぶお店と 足早に歩く朝の人込みと 平気でダブルパーキングしてる車のかたまりに、 細い木が埋もれて気づかなかった。 ぽつりぽつりと、ほんのところどころに浮かぶ小さな白い花。 紛れもなく桜だった。 よく見渡したら、道路の両側に木が並んでる。 ダブルパーキングで塞がれた道路を ダブル通行する車がいて それが両車線でそうだから ダブルのダブルのダブル状態で 対向車にぶつかりそうになってるのにぎゅんぎゅん車は突っ込んで その合間をまたジェイウォークするような人がいっぱいいて 横断歩道をちゃんと渡ってると思えば信号は赤だし。 そんなところを毎朝運転してたって 一目で分かるはずの桜の木に目をやってるヒマもない。 おまけに、ぽつん、ぽつん、と間を置いたシケた桜並木だし。 でも桜が咲いた。 迷子になった器量の悪いやせっぽちの猫が、か細い声をあげて不安げにこっちを見てるのを見つけたときみたいに、可笑しくて可愛くて可哀相で、泣きそうになってくすっと笑った。 「ミャア」って桜が咲いた。 今日はイースターの日曜日。 春が来た? そういえばあの人、ジェリービーンズが好きだって言ってた。 子どもみたいで笑っちゃう。 生きてるのかな。大丈夫なのかな。 しょうがないね、子どもみたいなんだから。 電話してみよう。 声聞いたら、たぶんもう怒ったり出来ないよ。そのままずっと。 でも電話してみよう。 春が来たかもしれないしね。 -
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