教えてあげない - 2002年06月11日(火) 「家の電話にかけ直してくれる?」ってあの人が言った。 なんで? あの人は昨日もおとといもその前の日も家からかけてくれて、「かけ直して」って言わなかった。だけど国際電話の請求書は親に見られるから、そんなに頻繁に長電話は出来ない。 わたしが家の電話にかけると、携帯にかける3分の1の料金で済むから、たくさん話せる。 なんで家の電話にかけ直してって言ったのかな。 昨日、真剣な声で気持ちが冷めてきたみたいなこと言ったから、そのこと? なんかほかに、長くなるような話があるのかな。 そんなこと思いながらかけ直したら、 あの人はいつもとおんなじように、普通のことを普通に話した。 なんだなんだ。わたしが言ったことなんか、本気にしてないんだ。 わたしは真剣に、来年の夏までに少しずつ気持ちを離して行かなくちゃって思って、 嫌いって言ったら少しは嫌いになれるような気がしたのに。 うん、うん、って気の抜けた返事をしながら 我慢してたのに笑っちゃった。 いつのまにかあの人のペースに乗せられて バカなおしゃべり一緒になってしてた。 全部お見通しかあ。 わたしがあの人を嫌いになったりしないって。 そんな話を真剣に相手したら、「嫌い」がどんどんわたしの口をついて出てくるだけって。 ほんとは大好きなくせにさ、って。 そうだよ。嫌いになんか少しだってなれないし、 あなただって想いを止めることなんか出来ない。 わかってるじゃんね、そんなこと。 あの人はまた音楽の話を夢中で始める。 それから、ああほんとに僕はこれが生き甲斐だなあ、今の生活が満足だよ、って言う。 「だけど結婚するんでしょ?」って何気ない声で聞いた。 「わからない。今は考えてない。曲作ることでいっぱい。」 「だけど、結婚したいんでしょ?」って、ほんとに聞きたいことをおんなじ声で聞く。 「ん〜。・・・あのさ、正直言ったら、したくない。」 正直な気持ちなんだろうな。 愛してることと結婚したいことは、いつも一緒なわけじゃない。 大丈夫。わかってるから、大丈夫だよ。 「したい」って言われたら泣いちゃうけど、「したくない」って言われても喜んだりしないし、そんなこと言っててもちゃんと結婚するってわかってるから。 「この間、久しぶりにカレのとこ泊まっちゃった」って、いつもの作り話のふりしてホントのこと言った。平気で言えちゃうなんて、ドクターのこともうあんなふうに好きじゃないからだって思った。あの人はその日の「カレ」があのドクターだなんて思ってないけど。「カレ」を信じてるのかどうかもわかんないけど。 でも、「そんな話しないでよ。これから仕事に行くのに、仕事に集中出来ないよ」って言った。 わたしだけあの人ひとりを愛してるなんてちょっと悔しいから、いいの。 あの人には愛する恋人がいて、わたしにもカレがいるふりをして、 わたしとあの人は恋人同士じゃなくて、そんな愛し合い方してなくて、 だけど想い合ってる。それでいいじゃん。 恋人になれないこと、いつのまにかね、わりと平気になったかもしれない。 わたしだけが、やっぱりあなたひとりだけを愛してるけどね。 ほんとにわかってないのかな。 でも、教えてあげない。 -
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