支え - 2002年06月21日(金) セミナーは別れた夫の病気がトピックで、わたしが次の専門資格を取りたいと思ってる分野だった。新しい薬とか治療法とかを必死で聞いてノートを取りながら、別れた夫がちゃんとやってるのか心配になる。夫にこれを話さなきゃと思う。 一ヶ月ほど前に電話したけど取ってくれなくて、メッセージを残したらメールが来てた。 「体調が悪くて今は誰とも話したくない。そっとしといてください」。 夫の病気がきっかけで勉強を始めて、これを生涯の仕事にして死ぬまでそばで夫を助けようと決めたのに、わたしは自分さえ裏切った。 病気のことだけはいつもいつも心配で、自分でやらなきゃいけないことちゃんと守って続けてるんだろうかって気になるのに、そばで何も出来ないなら心配なんてなんの支えにもならない。夫にとっては辛いだけに決まってる。わたしはひどい女だ。 わたしなんかじゃなくても、日本の専門医に診てもらえばそれでいい。でも気になる。新しい治療法が日本に入る日なんてきっと遠い。それに毎日の生活上の決まり事が一番大事な病気だ。そばにいて支えてくれる人がいればいいけど、そんな人多分いやしない。初めから病気だってわかってて、病気までひっくるめて好きになってくれる人がいるだろうか。気になる。助けてあげたい。でもわかってる。そんなことを思うことすら傲慢だって。わたしはもう妻じゃない。もう助けてあげることも助けてもらえないこともわかってて、ふたりで決めたことだ。 講義を聞きながら、何度も涙が出そうになる。頑張って欲しい。元気でいて欲しい。 まる一日のセミナーが終わってから、一緒に行ったジェニーとビレッジまで遊びに行った。 ジェニーが卒業した大学のある近辺。 街の真ん中に学部のビルが散在するのが楽しそうでいい。 近くまでドクターと来たことがあった。でもそこがどの辺だったのか、はっきりわからない。知らないところだらけの街。もっと知りたい。もっと知りたい。今ならそう思う。あの街がなつかしくても、もう戻りたいと思わなくなった。絶対この街を好きになってみせる。好きになるまで離れない。 チープな洋服やさんで、選んだ服を抱え込んで、ジェニーと試着室に行く。 試着室はお風呂やさんみたいで、仕切りのない大きなお部屋の壁が鏡張りになってるだけ。そこでみんなが下着姿になって着替える。 隣りの女の子が試着してるビキニがかわいい。「それかわいいね。どこにあったの?」って聞いたら、着替えてるとこ見られてたからか、「見ないで見ないで恥ずかしい!」ってキャーキャー言いながら両手で体をあちこち押さえる。そんなことしても隠れないって。かわいい。下の階まで取りに行って自分もおんなじビキニを着てみる。エキストラ・スモールなのに、ぶかぶか。「アンタってお尻がない」。ジェニーが吹き出す。その向こうで真っ赤なトングを履いた子がお尻を突きだしてジーンズを試着してる。真っ赤なトングをキュッと挟んだぷりぷりの大きなお尻が羨ましい。 山ほど抱えた洋服を試着しながら、2時間くらいそこにいた。 結局、お揃いで星条旗のシャツを一枚だけ買った。7月4日はふたりで仕事だから、ジョークでそれ着て仕事しようって。今年は晴れたらいいな。 少しだけ気分が晴れた。 でも、うちに帰るとまた怖くなる。 あの人が電話をくれる。 他愛ない話を5分くらいして、あの人は新しい仕事場の内装工事に戻る。 いつもみたいにキスしてくれて、「あ、見られた」って照れてる。 あの人は毎日忙しい。そして毎日優しい。 あの人を支えにしないで生きてくようになれるには、どうしたらいいんだろう。 -
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