またひとり - 2002年08月08日(木) ベッドルームの本棚をカバーする、スクロールのカーテンが欲しかった。 前のアパートは広かったから気にならなかったけど、ここじゃ色とりどりのバインダーがお部屋をよけいに狭く見せて、だからちょっとおしゃれに隠したかった。 IKEA には、やっぱり思ってた通りのがあった。生成のカーテンとベッドカバーに合わせて生成を選んだら、カダーは紺色がいいって言った。「木のナチュラルな素材の色に紺色はよく合うんだよ。僕は好きだよ」って。生成ばかりじゃたいくつだからフラッシーな色でアクセントをつけた方がいいとも言った。ブルーをお部屋の配色に使ったことがなかったから、考えてもいなかった。「じゃああのオリーブグリーンは?」って聞いたら、「合うとは思うけど古くさい感じがする」って言われた。そう言えばそうかなと思って、インテリア・コーディネーターのアドバイスみたいなカダーのおすすめ通りに、紺色に決めた。 明るい紺色は本棚の自然の木の色とほんとによく合って、白い壁と生成のファブリックの空間がピリッと引き締まった。 「あのベッドサイドテーブルの古いランプを捨てちゃって、さっき見てたブルーとグレイの線が入ったランプのシェードに変えなよ。ホラ、この紺色のスクロールにぴったりだろ?」 「ほんとだ。じゃあ大きい方のランプのシェードもおんなじにしようかな。あのシェードも染みがついちゃってるし」。 予定外に買っちゃったランプのシェードもお部屋に映えて、白い壁が綺麗に見える。 大家さんのフランクが本棚にスクロールカーテンを付けるのを手伝ってくれて、それからふたつのランプのシェードを付け替えたのは、月曜日の夜だった。ベッドルームがずっと素敵になったのが嬉しくて、カダーに電話で報告した。 「センスがいいね」って言ったら「当たり前だろ」ってカダーは笑って、「僕はきみをいつだって満足させてあげたいだけさ」って自信たっぷりに言った言い方が好きだと思った。 あのときはほかにもいっぱいおしゃべりしたのに。 カダーは「それから?」「他には?」って促して、わたしの話をいっぱい聞いてくれたのに。 日曜日に喧嘩したまま別れなくて済んで、カダーは優しいカダーに戻ってくれたのに。 好きだよって何度も何度も言って抱き締めてくれたのに。 抱き締め返したわたしのからだが、あんなに安堵で満ち足りたのに。 わたしはカダーを傷つけてた。 わたしはあのとき自分が傷ついたふりをして、カダーのほっぺたをひっぱたいて、本気でそう思ってたわけじゃないのにカダーをたくさんなじった。カダーはわたしのしたことと言ったことを、忘れようとしても忘れられないって言った。考えないようにしようと思っても頭から離れないって言った。 そして、あのときのあのドクターとおんなじことを言った。 こんなふうにつき合うのはやめよう。ただの友だちでいよう。僕はきみが好きだよ。ほんとにとても好きだよ。それは分かってて欲しい。だけど、友だちでいよう。 わたしは多分いろんなことをたくさん言った。 分からない。わたしが傷つけたのなら、そんなに傷つけたのなら、なんであなたの友だちでいられるの? もう友だちでもいられない。 はっきり覚えているのはそれだけ。 わたしにはもう分からない。 何がなんだか、どうなっちゃったのか、全然ワケが分からない。 またひとりぼっちになっちゃったってことしか、今は分からない。 -
|
|