Stick length - 2001年04月27日(金) シリーズ・スティック概論 ・長さについて・ テナーパンのスティックはとても短い。これは鍋の中で長さが邪魔になるからです。 ドラム缶はアメリカ規格と日本規格で大きさが若干違いますが、だいたい直径58cm。ドラム缶をひっくり返して、底だった所を鍋状に叩きのばして作ります。そのへこみ具合は大したもんで、鍋の深さは20cmほど。(昔、鉄工所のおっちゃんに見せたら、「よくここまで延ばしたなー、こら根気のいる作業やでぇ、俺やったらこんな仕事したくないわ」と大変感心されてました。) 形状的には中華鍋をもう少し凹ましたぐらい。同じ台所用品で言うならちょうど、ざるぐらいの曲線だと思っていただければいいでしょう。直径58cmのざるって見たことないですけど。。。その内側にたくさんの、いろんな大きさの丸が描いてあって、一つづつの丸が全て違う音に調律されています。 さぁ、直径58cmのざるの内側をドラムのスティックのような長いばち(40cmぐらいかな)で叩いているとこを想像してみましょう。あー、とても叩きにくそうだ。 もう一つの理由は、スナップが必要ないからです。ドラムの場合は、大きな音を出すとき、手首でスナップを利かせて、スティックの長さでさらにスピードをつけ、とても強く叩きます。うまいドラマーさんにあなたの体を叩いてもらうとよくわかります。みみずばれを作るぐらいはとても簡単です。 パンの場合、肩こりにも効かないくらいの強さで叩いていても、うまい人が叩けば実に大きないい音がでます。逆にスナップを利かせて叩いくと、大きな音は確かに出るのですが、耳障りな割れた音がするので、あまりおすすめできません。楽器にもよくありません。あ、もちろん僕も、にぎやかなやかましい曲を演奏していて、テンションがあがった時には「割れた音」をあえて使うこともあります。 じゃ、どれくらいの長さが適当なのでしょうか。アメリカの会社Panyardでは20cmほどのスティックを売っています。また23cmぐらいのながーいスティックを使っているテナーパン奏者を、トリニダードで見たこともあります。これは少し特殊な例ですが、彼は片手で二本づつ、両手で四本のスティックを使っているときに、鍋の中の一番距離の離れた音(5thスタイルのパンではb5の音) を叩くのにこの長さが必要なのだと言っていました。 私の教室の生徒さんには、少し短め、15cmほどのスティックを使っていただいています。短いスティックで練習をしていると、パン独自のスティックのとりまわし、腕の動きなどを早く身につけられるように感じたからです。今僕がメインで使っているのは13cmほどの短い物。パンの一番いい音を引っぱり出してやるのに、スティックの当たる角度はとても関係してくるのですが、これだけ短いととてもいい角度でたたけるので、気に入っています。ただ僕もいろんなタイプの曲をやるので、一つの楽器でも二、三種類のスティックを使い分けたりしています。 短ければいいという物でもありません。長い方が小さな動きで大きく先端が動きますから、早いフレーズの多い曲にはいいという人もいます。ただ、スピードの出る分、コントロールは難しくなります。結局好き嫌いのあるものですから、自分でいろんな長さの物を作って、試してみるのが一番でしょう。 -
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