鍋をたたく...鍋男

 

 

アイアン - 2001年05月14日(月)

 トリニダードのスティールバンドで、特徴的な楽器というと、アイアンがあるでしょう。
 車のブレーキドラムの形をした鉄製の打楽器 です。
 もとは本当にブレーキドラムを使っていましたが、最近は楽器として作られた物も多く見られます。

 車のパーツとしてのブレーキドラムは、ホイールの内側にとりつけられているので、普段見ることはできません。タイヤの交換などでタイヤを取り外した事がある人は、その内側に取り付けられている、鉄のパーツを見たことがあるでしょう。あれがブレーキドラムです。
 スキヤキ用の鍋の底に丸く大きな穴をあけたような形をしています。

 2キロ3キロは当たり前、大きな物になると片手で持つのも大変なくらい重い物です。トラディショナルスタイルのバンドでは、これを片手で持って、もう片方の手で叩きながら、練り歩きをするんですから、大したもんです。

 この分厚い鉄の鍋を、かねのスティックで叩くと、かなりやかましい音になるのは想像するに難くないでしょう。スティールバンドは非常に音が大きく、しかも人数も多いので、リズムを揃えるには、鋭く、大きな音のするリズム楽器が必要になるんです。50人100人というバンドではこのやかましさも気にならないくらい、ボリュームがあるんです。一人で優しく叩いているパンの音とは、まったく違う、まさに「オーケストラサウンド」です。

 カリプソやソカでは、カウベルでオンビートを刻み、アイアンで細かい16分音符を刻んでいくというスタイルが、基本になっています。カウベルが「コン、コン、コン、コン」と鳴っている隙間に「リキチキ、ンキチキ、タキチキ、ンキチキ」という感じです。
 鉄のスティックはいろんな物を使いますが、日本で簡単に手にはいるものであれば、長いボルトがいいでしょう。軽めのいい音がします。ちなみに僕好みの音は、もう少し重めのスティックでたたいた、ガシッとした音です。スティックが重いので、太鼓の経験のない人が、変に手首を使って叩くと、手首を痛める事もあります。素人さんは無理をなさらない方がいいかも知れません。

 普通のバンドでは両手で叩くので、「16ビートを叩きっぱなし」という事になります。しんどいわ、飽きてくるわ、気を抜くとすぐにずれるし、ずれたらみんなににらまれるしで、責任が重いわりに、つらいだけ、という人もいます。でもアイアンがいいバンドは、いい感じになるんですよね。

 速いテンポのカリプソや、ソカの曲をするときには欠かせないアイアン。スリリングな演奏か、のんびりした感じにするのか、アイアン一つでかなり音が変わります。この楽器がなきゃ、やっぱり雰囲気がでませんね。


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