彼の部屋に行った。 寝てるから、起こさないようにそっと隣に転がって 真っ白で、暗闇で灰色に見える天井を見つめて、ふと、思った。
前に付き合ってた彼の所に、夜中、車で1時間かけて会いに行った事。
やっぱりこっそり隣に眠った。彼は、寝てても私が隣に来ると、 すぐに気付いて、横向きのまま私を抱きしめる。 翌朝になっても覚えていない行動だけど、それがかえって嬉しい事を 私は知っている。…そういうことを、思い出す。 抱きしめる腕の感触とか、目を開ける瞬間の重そうなまぶたとか。
今の彼は、私が見つめるとビックリして起きる。 寝ているあいだに、いつの間にか離れてたりする。 夜中に起きて台所でタバコを吸ってたりする。
「思い出というのは、いつでも、時が経つほどキレイに心に映るから…」
だから、思い出は“思い出”なのだけど。
勿論、思い出の中のあなたは楽しそうに笑う。 今でも私を哀しくさせるのだけど、そういうあなたの笑顔は、 その頃の私の笑顔と一緒に、そこで幸せな“思い出”でいてね。 そうして覚めない夢のような、優しい欠片で私をたまに助けてくれる。
ちょっとくさいけど。そういうふうに自分に言って聞かせる。 そうして、とりあえず
前へ…。
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