今日は、昔、好きだったあの人を見た。前と同じ顔とからだだけど、ただ私を見る目が違うだけだ。前は私はあの目を見るだけで胸が急いたけれど、今日は平気だった。家に帰ってひとりでぼーっとしていたら、昔は私が夜中にこっそり会いに行くと、寝ぼけているのに私を抱いてくれた、彼の腕や匂いを思い出した。それは、まるで夏を憂う初秋のように、ほんの少しセンチメンタルで、ナーバス。それはとても懐かしいけれど、それでも、私は困らない。通り過ぎる風のようだと、思い待つだけ。…秋になって行く。