JERRY BEANS!!

2001年08月28日(火) 盲目

彼は、私なんて見ていない。そう、思っていた。

ただ私だけが彼の背中を追いかけていて、だから
私が泣いて怒っても、側にある柱を殴るだけで。
どうしようもない自分に怒っているだけで、それが
やるせないだけで、私の事は、本当はどうでもいいのでしょう?

そう、思っていた。

私が居なくなるまでは、淋しいといったら抱いてくれたし、
謝ってと言えばごめんと言った彼だけど、本当に本当に
私の事を考えてくれたのは何回あっただろう。

どんなに眠くても、朝はバイト先まで送ってくれたし、
寒い冬でも車の雪を降ろしたりしてくれた。だけど本当に
大事な時は、私より自分の事を考えた彼だった。
後悔はしたのだろうか。こんな時ばかり素直にうんと首を
縦に振るのはどうしてだろうと、思って泣いた。

涙はどれだけ出ても枯れない。

…あの人は、あの人は、あの人は。

何度も繰り返すあの日の画像。
それでも私は、変わらず彼を好きだった。
日に日にかすれる画像の奥に、ますます私は盲目になる。
彼が、私を見てたかどうか。大事な事が、今はもう思い出せない。
ただ彼を好きな気持ちだけで一生懸命追いかけていた。あの人は、
顔はこちらを向いているのに、その瞳はどこを見ていたんだろう。

はっとして目が覚めた時、目の前に居たのは、違う人だった。
「どうして、泣いてるの。」真っ直ぐ私を見て、頬を押さえて、
その手はとても暖かくて、泣いてぐしゃぐしゃの私の顔は余計に沈んだ。

ずっと凍える寒さも感じずにいられたのは、
彼が風と雪をさえぎってくれてたから。だけどその目は私を見ない。
私の傷に触れないように、優しくしてくれた。
私は彼が好きだった。彼は守ってくれたけど、その目はやはり
私を見なかった。

今居る彼は、一生懸命、その手で傷を押さえてくれる。
血で染まる暖かい手で、一生懸命押さえてくれる。そのうち流れが
止まるまで。ありがとう。ごめんなさい。
私は謝りながら、血まみれの手に、手を重ねた。


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nana [HOMEPAGE]

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