君の日常になりたい。
例えば、眩しくてよける日の光。 夜を照らす月。町の街灯。
少し冷たい風。通い慣れた通勤路。
温かい土。見飽きた車。
僕にとっても君は特別な非日常だ。 だから君が隣りに居ると、僕は11月の美しく薄い空の色も、 風の香りも、山の紅葉も、街の雑踏も感じない。不感症。 どうでもいい会話にしか耳が使えずに、 君の茶色の目を見続けてしまう。
僕は君の日常になりたい。
例えば、風に浮遊するポプラの綿とか、 駅に置き去りになった忘れ物の手袋みたいに、 普通に、ただそこに居たい。
永遠でもなく、刹那的でもなく、ただの日常として。
擦り切れて、少しずつ変化し続ける日常。 君が意図的に止めるまでの、毎日の繰り返し。
君にとって。 誰もがその存在を疑わずに眠る、「明日」と同じ物でありたい。
|