貴方が過去を話す時。 脳の中には、記憶の中には、綺麗な花が咲いていて、 私は間接的に、その花を垣間見る。
…例えばそれは、
色とりどりの花の部分だったり、 緑や黄色で、小さな産毛のある細い茎だったり、 脈の走る、筋張った潤いある一枚の葉であったり、 細く手を伸ばす根の部分だったりする。
貴方がそれを口にする時。 花は全てに綻んで、…真夜中に咲く。光にも全く無頓着に。
私はその花を手折ることも出来ないし、水をあげることも出来ないから、 ただ、それが風に揺れるのを見つめる。
きっと永遠に枯れない花。実を結ばない花。私の、知らない花。
記憶の河にひらりと落ちた、一片の花びらでさえ、 そのまま変わらない形と色のまま、流れ続けるんだろう。
枯れずに、知らない、貴方だけの花が。満開で綻んでいる。 こぼれる花びらに差し出す掌に、触れることも出来ない。
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