きっと、今もあの人は、以前と変わらない温度で、 冷たいままなんだろう。
今頃一体、何処で何をしているんだろう? 相変わらず、笑っているのかしら? 泣いているのかしら?
きっと、あの時、あの瞬間でしか、あの人には触れられなくて、 だからこそ今、私はこうして幸せにひたっていられるんだけれど。
きっと、あの時、あの人に触れられる事がなかったら、 私の人生はこんなに自分本位に居られなくて、 きっと、どこかで自分らしさを無くしていて、 どこかしら不自由で、哀しい事にも気付かずに、 貴方にも出逢えずに進んでいたんだろう。
こんな気持ちを知らずに居たら、どんなふうになったんだろう。
あの人に、触れる悲しみも知らずに、 貴方に、触れられる愛しさや情熱も、涙も知らずに
私は居たんだろうか。
きっと、…こんなに哀しい事を、知らずに居るよりも、 知って、泣く方がずっと気持ち良いことを、どこかで知っていたんだろう。
あの人の、冷たさを。
貴方の、静かさを。
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