「…私を、捕まえて」
そんな無茶なお願いを。
…本当は、誰も誰かを完全に捕まえる事が出来ない。 どんなに体を拘束しても、心は空に飛んでいくし、 心をどんなに拘束しても、体は脆く、易く壊れてしまう。
その果ては、途方も無くて届かない。 たった、ひとりの人ですら。
右手に持った網で、すぐに捕まえてしまった気に なるけれど、自然と緩む網目を、ひとつひとつ 気にしながらいつだって糸を引き続けなければならなくて。 いつだって、するりと抜ける網の目から、貴方が居なくならないかと 気にしながら、ただ確かなこの網のはしを掴んでいる。
体を拘束して、魂を縛り付けたとしても。 その三つ目はどうしても手に入れる事が出来ない。
出来ない事を知っていても、あの端に手が届きたくて
貴方の手が、いつか私を捕まえるような気がして
…届いて欲しくて
|