Share * 愛部屋 * Room   story by...kisaragi & tako

 

 

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ZS日記 「 海 」-9・・・・・tako - 2004年01月21日(水)

母親似の大きな瞳は、驚きの次に困惑の色に変わり、
目の前のサンジを注視している。
「えっと…、サンジ、さん…」
「さん、は無しって言ったろ?」
ますます困った海は、縋るような瞳を今度はこちらに向けてきた。
「サンジ、ガキを混乱させんな。」

海は年上の、それも父親と同世代の大人を呼び捨てにするなど
初めてのことなので、良し悪しの判断がつかずにいる。
普通の子どもはそうだ。
でもサンジには、それを許す雰囲気を感じるらしい。
そうでなければ海は礼儀正しく、敬称をつけ続けるだろう。
海の髪をくしゃっと掻き混ぜ、
「サンジがそう言うんだから、そう呼んでやれ。」
いいの?と、まだ躊躇いの色を残した瞳が無言で訊ねる。

それを払拭するようにサンジが俺と海の間に割って入った。
「海、ピザは好き?上に知り合いの店があるんだ。ジェラートも最高だよv」
海の顔が、ぱぁっと輝く。
「うん、好きだよ!サンジ…の友達はコックさんなの?」
「ああ、面白い奴だぜ。紹介してやるよ。」
二人は俺に背を向け歩きかけて、同時に振りかえった。

「とうさん、ピザでいい?」
「ゾロ、ピザでいい?」


「…なんでもいい。」




サンジの友達がやってると言うイタリアンカフェで、
石窯で焼いたパリパリのピザを食べながら、二人はすっかり打ち解けていた。
サンジは多分、口に出来ない疑問をたまに視線に絡めて、
しかし唇は決してその言葉を紡がなかった。
海のことは、隠し立てしている訳でも無いが、誰彼なく吹聴することでもない。
でも、こいつにはいずれ時間を作って説明しないとな。

海とサンジが食後のジェラートに喰いついている時、胸ポケットの携帯が鳴った。


「あれ?ゾロも着メロ設定してんだ?いつもそうだっけ?」
「あ、ナミちゃんだ!」


軽快な音楽と共にディスプレイに現われた名前は、
海の言う通り、今日ここで待ち合わせをしていた、ナミだった。


-

ZS日記 「 海 」-8・・・・・tako - 2004年01月08日(木)

サンジの白い掌が、海の、小麦色に焼けた少年らしいそれを
慈しむように包んでいる。
この光景が現実の物と認識できず、俺の脳はフル回転しながら、
その実、停滞していた。

「とうさんの…会社の?」
海は、少し首を傾げながらも、その唇には微笑みを浮かべ、
「とうさんがいつもお世話になってます。」
ぺこり、とお辞儀をした。
一瞬の間の後、サンジが破顔したのと、俺の脳が動き出したのは同時だった。
「しっかりしてんなぁ。何年生?」
「4年生です!」
つるつる滑るカーテンのパッケージを3つ、落とさないように必死に抱え、
『です』に若干力のこもった返事をする。
サンジが手を差し出すと、素直にそれらを手渡した。

「もう決まったの?」
「う〜んと、まだ…。 どれにしようかなぁ…」






この後、ベッドカバーも選ばなければいけないし、
寂しくなった冷蔵庫の中身も補充しなければ。
その時、ショッピングモールの大きなからくり時計から音楽が流れ、人形が踊り出た。
午後1時。腹も減った。
「海、先にメシにすっか? サンジ、お前もう昼メシ喰った?」
「いや…まだだけど…」
案の定、躊躇いの色を含んだ返答。
それを払拭したのは、海の無邪気な一言だった。
「うん、おなか空いたよ。サンジ…さん?も一緒にご飯食べよう!ね、いいでしょ?」

こんないたいけな子どもの誘いを断れる奴じゃないのは分かってる。
曖昧な笑みを浮かべながらも、サンジは首を縦に振った。
「そうだな、俺も腹が減ってたんだ。海くんは何が好き?」
「『海』でいいよ!『くん』なんて誰も付けないし、それにくすぐったい。」
人懐っこい眼差しを真っ直ぐサンジに向けると、

「分かった。じゃ、俺も『サンジ』な?」



奇妙な協定が結ばれた。



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