一平さんの隠し味
尼崎の「グリル一平」のマスターが、カウンター越しに語ります。
目 次|過 去|未 来
その16
私は・・・毎日・毎日、配達で・・・12月にもなるとハンドルを持つ手が冷たく、出前箱を持つ手も冷たく、 次から次と出前の料理が上がり、ほとんど店の中にいる事がなく、たまに店にいる時は洗い物が 山ほどあり・・・洗ってると、また出前の料理が上がり・・・手を拭く間もなく・・・
「おーい!パーマ屋さんの出前上がったでー」・・・・・・・「はーい!」
前掛けが洗い物で、ビッショリ・・・レジの姉さんが・・「外は雨だから、傘をさして行ったら・・・」
「ありがとう!でも近くだし、自転車で行きまーす」・・・・・(どーせ濡れてるし)
パーマ屋さんの、大きな一枚ガラスの扉を開けて・・・「まいどー!一平でーす!」
突然!お客さんの、どなる声!・・・・・どーも、見習いの女の子が怒られていた・・・・(可哀想だった) どっかのクラブのママさんみたいで・・・
「商売道具のこの髪をどーしてくれるんや!」・・・・・・髪を洗うのに液を間違えたみたいでした、
テーブルの上に料理をおきながら、その子の方を見ると、ペコペコ頭を下げながら泣いていた、
どーみても、オルテガの女版!髪に金をかけるなら、痩せてからやろ!と、思いながら店を出た、
外にでたら、雨あしがひどくなってた・・・看板の横で雨に濡れながら見習いの子は泣いていた・・・
「風邪ひくよ!店に入ってもう一度謝ればいいよ・・・・これぐらいの事で、店やめるなよ!」
その子は、びしょ濡れの髪で、小さくうなづき店に・・・恐る恐る、はいって、いった・・・
つづきは・・・・・・・・・また
その15
足長さんから、その話しを聞いてから、成るほどって思うことがあって・・・
ここに集まってマージャンをする人たちは何故か障害者の人たちが多く、それも足長さんは 丁寧に教えてるんです、時には、福祉の事、保険の事、妻の事、人生の悩み、・・・頭のいい足長さんは、みんなからとっても頼られてました・・・幾度も自殺を考えてた、目の見えない人に・・・マージャンパイの 見方を教えてたことがありました、なんども、なんども、指の腹でわかるように、当てたら手を叩いて 自分の事のように喜んでましたよ、
いま思うに、当時の障害者の方は、スロープの歩道があるわけでもなく、アラームの横断歩道があるわけでもなく、車椅子も電動じゃなく、手で何回も何回も漕いでいました、大変な思いして生きていました、
足長さんが・・・
「君にお礼おいわなくちゃ!前々から思ってたことなんだけど・・・」
「え!あーはい!」
「前の事務所の若い連中がマージャン代を大分ツケにしてて、それが、この間、親分が来て!」 「内の若い衆がツケしてへんか!言うて払ってもらいましたよ、・・・・」
「横の喫茶店のマスターも喜んでいましたよ・・・、」・・・・・・(オルテガ!カッコイイ−!)
また・・・・・この次・・・
その14
足長さんは、私にこっちに来て座るように、椅子を出して指差した・・・ 終戦直後、彼は、どさくさに身を隠し息を殺しながら、人ごみの多い汽車に乗り関西に来たそうです、 尼崎の駅に降りてたのは労働者が多い街だったからで、最初は屋台で商売をしていたそうです・・・ 幾らかの小金を貯めて、今のマージャン屋を始めたそうです・・・
その間、名前も年齢も隠して、20数年、地を這うように身を隠し、生きてきたそうです・・・
「これを見てみますか・・・」と、・・・・足長さんは私に両手首をみせた、・・・(本当にビックリした!)
たしかに切った後がしっかり残ってた!初めて見たこともあって息を呑んだ!言葉が出なかった!
「関西に逃れて来る時に、なもない小さな駅に降りたんだ・・・」
「駅を降りて歩いてたら、お坊さんに声をかけられ、そのままお寺にお世話になった」
そのお寺でしばらく掃除ばっかりさせられたそうです・・・少しずつ心も洗われて・・・ 身を隠し息を殺した生活から、始めてそのお坊さんに自分のことを打ち明けたそうです すると・・・お坊さんが言ったそうです!
「そのままでいいから生きなさい!そして・・一日、一人、相手の身になってゆっくりと話を聞いて下さい」
「自分で命を絶てば、必ずあの世でも、逃げ待とう日々が、必ずきます!」
足長さんは20年間と言うもの、出来るだけゆっくりと相手の話しをきくようになったそうです、
また・・・今度!
その13
オルテガの事務所の前に小さなパーマ屋さんがあって、 そして、その横に、おじいちゃんが一人でやってるマージャン屋さんがあって、ぜんぜんはやってなくて たまに、お客さんがいる時はひとりでバタバタ!バタバタ!昔の人にしたら背が高く180�儖幣紊呂△辰燭隼廚い泙垢�・・・私の中では、足ながおじいちゃん!狭い所がますます狭くなるのでした・・・
言葉は大阪弁じゃなく・・・どうも関東の人らしく・・・凄く頭は賢そうで・・・いつもむずかし本を読んでいた 家族もなく、天涯孤独らしい・・・店の二階に住んでて、あまり外で見かけた事がない・・・
ある日のこと、店も閉店して、かたずけてた時に、足長さんから電話がかかってきた、
「皿を下げに来てくれないか」・・・・・・・・・(明日じゃだめかなー)
深夜も零時をすぎ、人通りも少なくなった商店街を抜けて店をのぞいた・・・「まいどー一平です」 四台しかないマージャン台の側に座り一人でパイを磨いていた、
勝手にいつもの調理場の場所に取りにいって帰ろうとすると・・・背中越しに声を掛けて来た!
「君は何処から来たんや・・・」と、僕が不思議そうな顔をしてると、「田舎のことや!」
「あ、ハイ!宮崎です!」・・・・・・(いきなり立つと、やっぱり背が高い!足が長い!)
「宮崎かー !いい所だよねー戦時中に一度、行ったことがあるよ!」・・・・(へぇー )
そして・・・彼が、ポツリ、ポツリと昔のことを語りはじめました、
「僕は出身が東京でね、大学は東京大学なんだけど・・・卒業して職業軍人になってね・・・」
「戦争が終わったら、いつのまにか・・・A級戦犯になっててね!」・・・(えええーそれってあかんやろ!)
「東京裁判が終わったとき家にいて、友人が教えてくれてね・・・」・・・(なんで・・・ここにいるの?こわ!)
次は・・・・またのお話し・・・
その12
三人に後で聞いた話しだけど、出前の自転車が事務所の前に止まってるし、その二階で、怒鳴る大きな声がした時、たまたま事務所にいた、オルテガが三人に・・・「見てこい!」 だったそうだ、
剃り込み!四本指!刺青!三人とも、凄い顔して・・・
「偉そうに言うとんのわ!お前か!」・・・・・・・(君達も結構、偉そうなんだけど)
床を吹いてる私を見下ろすように椅子に座って、怒りあらわなマスターを・・・ 三人が取り囲むように、見下ろし、三人で、そっと椅子ごと抱えて、らせん階段の上から・・・ 下へ向けて!落としたんです!・・・「あああードンガラガッタン!ドンガラガッタン!」 ちょうど、カーブの所で椅子がひっかかって、本人も椅子の下敷きになり、ゥウウゥゥゥ・・・ 三人が、見下ろして、マスターに言ったセリフに・・・シビレタネ・・・
「男はな!弱いものイジメは!せーへんもんや!」・・・・・・・・・・(オルテガや・・・)
マージャン屋のマスターが私に・・・「あの人は、負けが込むと廻りに八つ当たりするからみんなに 嫌われたしなー心配せんでええで!」・・・・・「ああーはい!」
こんな事も・・・ありましたよ・・・
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