あなた・・止めないで!今夜も走るわ・・私頑張るの〜 「おう!行って来い!頑張れよ!」と・・夫は言わない・・(笑)
めげずにバドミントン用の短いパンツを穿き、軽やかに玄関を飛び出した。 ああ・・誰にも見つからなければいいが・・とちょっと心配しながら走り出した。 案の定堤防には近所の住民数名が夕涼み中で、犬の散歩をしている人も居た。 やば・・ちょっとだけコースを変更して、堤防の下の道をこそこそと走る。 今夜は気合いが入っていたので、いつもの時間より1時間も早かったのだ。 ビールも晩御飯も控えめ、お風呂は汗だくになりそうなので帰ってから入ることにした。
早く真っ暗にならないかな・・やっと一番星が見え始めた頃だった。 うん!あの星を目指して走ろう!かっこいいことを思いながら一気に橋の袂まで着く。 すごい息切れがしてしんどいことこの上ない。でも休めばもっとしんどくなりそう。
息を整えながらしばし早歩きに切り替えた。とにかく向こう岸まで行かなくちゃ! しかしまだ交通量が激しすぎて、クルマのライトがやたらと気になってしょうがない。 いやだ・・私をライトアップなんかしないで・・顔まで照らさないで・・・。 なのに・・後から後からライトが襲って来て照らされたら歩く、暗くなったら走る。 これでは走ってることにはならないなあ・・と苦笑しながらまた走る。
橋の上は涼しさ倍増でとても気持ちが良かった。ふらついて車道に落っこちそうだったが(笑) 目標地点の向こう岸に“遍路道”の道標がある。それにタッチしたらOKと決めていた。 やっと手が届いたら嬉しくてちょっと感動してしまった。ああ・・やれば出来た!
嬉しいと足取りが軽くなる。今度は歩かずに橋を渡ることが出来た。 しかし・・堤防まで帰り着いたらもうふらふらで力尽いてしまったのだ・・(笑) ついに膝を押さえて立ち止まってしまう。なんのこれしきと思いながら・・もうダメだった。
堤防に自分の影が映し出されて、なんだかもう一人自分がいるような気がした。 その私はとてもだらしない歩き方をしていて、手の振り方が微妙に滑稽なのだ。 くすくす・・と私は笑い始める。みっともないぞ!とからかってしまいたいくらいだ。
家に帰り着いたら靴下が脱げなかった。足が痛くて曲げることも出来ない。 しょうがないので夫に脱いでもらって、えへへ・・と舌を出し可愛く笑って見せた。 「どうせ三日坊主だろうに・・」と夫は言わない。とにかく何も言わない・・。 だから私は頑張ろうと思っている。やれば出来たんだからやれば出来るんだ!
お風呂で足をほぐしたらとても楽になって、何がしんどかったんだろうと思った。 しんどいしんどいと口癖のように言っていた頃もあったけど、それがちっぽけなことに思える。 私にとって走ることは荒治療なのかもしれないけど、何かを越えられるならそれも良いかな。
いろんなこと・・からだのことだけじゃなく心の中の葛藤やわだかまりや・・・ 忘れなければいけないことや・・始めなくてはいけないことや・・
たとえば今日が、私にとって特別な日であるのなら・・ もうそれを走り抜けて跳び越えてしまったような気がしている。 不思議な感情が湧いてくる・・とても不思議な夜だ。
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