ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2003年06月21日(土) 確かめてみて私を

今朝目覚めるとあの腐ったタラコ唇が・・薔薇の唇に変わっていた。
幾日も続いていた不快な朝。ああやっとと嬉しくて布団の中で歓声をあげてみたり。
鏡を見るまでもない。それを何度も指で確かめてみる。柔らかい・・ああ滑らか。

ふと・・誰でもいい。キスをしたいと思った。
手近なところに横たわる者あり。血迷ったかおぬし!とその者血相を変え飛び逃げる。
ああ・・逃してしまった。他には誰も居ない。なんという不運なことか・・。

女は手の甲を吸う。肌から心地良さが伝わって来る。ああ・・これが私だとほっとして。
薔薇はいつまでもそうあり続けてみせる。と・・心に誓った朝のことだった。



男が眼鏡を外して新聞を読んでいる。女はその姿がとても好きだった。
真剣に活字を追っている。そのするどい瞳が渋いなと惚れ惚れする時があった。
見られていることも知らずに男は無意識に耳垢をほじくっている。
そして指先でそれを弾き落とす。男のかけらが落ちる。女はなぜかはっとするのだった。

「一万本の紫陽花が咲いているぞ」とても得意そうに告げに来る。
俺が先に見つけたんだからなと言わんばかりの笑顔で。
「へぇ・・どこどこ?」新聞を取り上げてパラパラと捲る。

それはとても遠い町の風景だった。でも行こうと思えば行けない距離ではない。
ああ・・そうだったと思い出す。数日前にふと呟いたことがあった。
「一面の紫陽花ってあるのかな・・あれば見てみたいな・・」と。

ぽっと顔が火照ってくる。何気なく呟いたことを覚えていてくれたんだ・・と。
「わぁ・・ありがとう」そんなことは口が裂けても言えない。
ただ何処からともなく温かなものが込みあげてくるのだった。

ふたりは熟して落ちた木の実。後は腐って地に帰るだけだと思う時もあった。
でもそうして同じ土の上に転がっているふたり。まだ息をして空を仰ぐことが出来る。

「でも遠いね・・」と女が呟く。「どうってことないさ」と男が告げる。

     明日の朝決めようと男が言うから・・・
        
                 うん・・そうしようと頷いた女だった。


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