ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2003年06月23日(月) 今日という日

大好きだった友人の命日。もう・・四年の歳月が流れたんだなと。
お墓参りに行けなかったので今しんみりと彼を偲んでいるところ。

初めて出版した本が遺作となり遺品となった。
海の底の写真とユーモラスなエッセィ。人柄が滲み出ている優しい言葉の数々。

彼の家は国道沿いにあった。仕事帰りにふらりとよく遊びに寄ったりした。
ほんの10分くらい。とりとめもない話ばかりするのだけど心がとても和む時間。

「おお!ええところに来た コーヒー淹れてくれや」としんどそうに寝そべっている。
小さな鍋でお湯を沸かす。いつもネスカフェで砂糖もミルクも要らなくて。

一応男なんだけど・・警戒することはなかった。気の合うおじさんだけど友達みたいに。
親近感がいっぱいあふれてくる。今思えば・・ちょっと癒し系のおじさんだったかも。

寝そべって何を苦しんでいるのかと言えば、締め切り直前の原稿を書いていた。
結構有名な週刊誌に毎週エッセィを連載していたりして。彼もちょっと有名人。

「書けんぞ〜書けんぞ〜助けてくれや」髪の毛を掻き毟りながら縋るように私を見上げる。
その悶える姿が私は好きだった。きっと書き上げるんだからと信じていればこそ。

帰るとき貝殻をもらったこともある。海の底で見つけた珍しい貝だとか。
だからほんとうは誰にもやりたくなさそうだった。でもしぶとくねだってみる。
「これちょうだい」と言ったときの彼の顔が忘れられない。
「それは・・それだけは」と言いたそうにしているのに言わないのだから。

私は勝ち誇った思いでそれを持ち帰って来た。いひん・・それも遺品になったけれど。
どうしても欲しかったわけではなかった。のに・・なぜかその時それを放せなかった。
大切な貝殻だったんだなと後で思った。でも返しには行かなかった。もう私のものだったから。


彼はあっけなく死んだ。四年前の6月23日午後11時4分に。
亡くなる二日前に病院へ行った。もう意識はないんだと言われたけど・・。
彼の手は冷たかった。もう骨のように細くて。
名を呼びながらその細い手を握り締める。その時彼が呻き声を上げたのだった。
「うう・・うう・・うう・・」と何度も。何かを話そうとしていると思った。
意識がないなんて嘘だと思って。私がここにいるのが分かっているんだと思って。

「死にたくないぞ〜死にたくないぞ〜助けてくれや・・」

私は泣きながら彼と別れた。
どうしようも出来ないことがこんなに重く圧し掛かっている。
なぜ彼が・・いなくならなければいけないのか・・その理由が知りたかった。


彼は白く粉になり海へ流れていった。そこが彼の住処となって。
そして決していなくなったわけではない。今もここにいる。確かにここに。
もう決して苦しむことはない。満面の笑顔で話し掛けてくるのだった。

    
          海が笑った・・・今日という日


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