もう5月だと言うのにストーブに火をともす朝。 けれども冬の寒さにくらべればずいぶんと暖かくなった。
日中は降り注ぐ陽射しに爽やかな風が吹きぬける。 そんな風のおかげで汗ばむ事もなく川仕事もはかどった。
自転車でお大師堂に向う。向かい風にふうふうしながら辿り着くと 顔なじみのお遍路さんが二人来てくれていて、笑顔で再会を喜び合う。 「あれ?ワンちゃんは?」あんずのことも気遣ってくれて嬉しかった。
午後六時を過ぎると、寝てばかりいたあんずも起き出して来て 少しだけ土手を歩こうと一緒に散歩に出かける。 近場を歩いてすぐに帰ろうと思っていたのだけれど 河川敷の草むらにふたりのお遍路さんを見つけて気になった。 「野宿をされるのですか?」声をかけながら近づいて行くと なんと外国人のお遍路さんで、日本語がほとんど伝わらないのだった。
身振り手振りで訊ねていると、河川敷にテントを張るつもりらしかった。 お大師堂がすぐ近くにあることを伝えようとしたのだけれど 「お堂」って英語では何て言うのだろう?まったくわからなくて とにかく指をさして屋根の形をして見せて「スリーピング」って言ったら 「レッツゴー」と言ってくれてやっと伝わってくれたのだった。
「マイ、サン」どうやらふたりは親子のようだ。 「アメリカ?」って訊くと「オランダ」ってこたえてくれて お父さんのお遍路さんはドイツ語の先生をしているらしかった。
歩きながらそれ以上の会話が出来ない。 なんだかもどかしいような、それでいて笑顔がとても嬉しい道のり。 やっと無事にお大師堂に案内することが出来てほんとうに良かったと思う。
先客のお遍路さん達も「ノーイングリッシュ」と言いながら歓迎してくれる。 「フレンドね」って私が言うとオランダ人のお遍路さんが握手をしてくれた。
大きな手、とてもあったかい手。そうして何よりもみんなの笑顔が嬉しい。
言葉は通じなくても笑顔と笑顔で伝わることがあるって素敵だなって思った。
今頃四人のお遍路さんは、言葉はちんぷんかんぷんでもうちとけあって きっと仲良しになっているにちがいない。そう思うと嬉しくてしょうがない。
一期一会。あんずと一緒に夕暮れ散歩に行かなかったら出会えなかったのだ。
こんな日もあるのだなあ。なんだかすごく不思議な気持ちになった。
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