夜道を歩けば三日月が寄り添うようについて来てくれる。 そうしてほのかな月明かり、なんだかそれがとても嬉しかった。
昨日はもう立冬、秋の名残がせつなげに後姿を垣間見せる。 冬将軍はまだ戦の準備をしているのだろうか。 いざ出陣と突撃してくるのも間もないことだろう。
ぽかぽかと暖かいひだまり。それは幸せのかたちをしている。 ずっとずっとこんな日が続けばいいなと欲のように思ってしまうのだった。
仕事を終えて帰宅する。自転車でお大師堂に行って帰ると 犬小屋で寝ているあんずを起こすのが毎日の日課になった。 声をかけたくらいでは起きない。何度か犬小屋を叩いたりして起こす。
やっと起きだして来たあんずはもうすでにふらふらとしていのるのだけれど 「行こうかね」と声をかけると「うん、行く」という顔をして見せる。
もう土手の石段を上がれなくなってしまってずいぶんと経った。 家の前の路地をほんの少し往復するだけで精一杯のようだ。 途中で何度も転んでしまう。尻餅をついてはまた歩き始める。 時には家まで帰れない日もあって、私に抱っこされて帰る。
せつない目をして私を見上げるあんずが憐れでならず胸が熱くなる。 歩きたいの、でも歩けないの。その現実を彼女はどんなふうに受け止めているのか。
今年の冬がもう最後の冬かもしれないな。夫が呟けば頷くしかなかった。 覚悟はしているけれど「その日」を思うと胸が痛く苦しくてならない。
「あんちゃんご飯よ」幸い食欲はあって今夜もぺろりと平らげる。
がつがつと食べている姿を見るとほんとうにほっとする。
明日も明後日もずっとだよって思う。
美味しい顔は幸せな顔。生きているってほんとうに嬉しいことだね。
|