月見草の花が開くとき「ぱちん」と声をあげるのだそうだ。 それは夕暮れ時なのだろうか。一度だけでいいからその声を聴いてみたいものだ。
生きていると言うことはそういうこと。 野の花も雑草もみんなみんなそうして生きているのである。
月見草の話を聞いたのはもうかれこれ30年ほど昔のこと。 当時勤めていた職場の上司から教えてもらったことだった。
その方がまだ19歳くらいの頃だったらしい。 大好きな男性とデートをしたのだと懐かしそうに話してくれた。 胸がどきどきしてまるで夢を見ているようなひと時だったそうだ。
土手の草の上に腰をおろして沈んでいく夕陽を見ていたそのとき 「ぱちん」と声がした。それはいくつも聴こえてきたと言う。
二人のまわりに月見草がいっぱい咲いた。レモン色の初恋みたいに。 それは一生忘れられない素敵な思い出になったのだそうだ。
月見草の花を見るたびにその話を思い出す。 そうしてすごく私のことを可愛がってくれたその方を思い出す。
元気にしているかしら。母と同じ76歳になっているのだな・・・。
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