二十四節気の「大暑」暦の上では最も暑い頃とされている。 最高気温は34℃、猛暑日にこそならなかったけれどやはり大暑である。
子供の頃には大好きだった夏、エアコンなどまだなかった頃。 なんとアイスキャンデーが一本5円で買えた時代でもあった。
確か夏休みの事だったと思う。母がちょうど留守をしていて どうしてもアイスを食べたかった私は母の財布から10円玉を失敬した。 母に無断でお小遣いをもらうことなんて後にも先にもそれっきりだった。 自分はものすごく悪い事をしたんだなと自覚していたのだけれど とにかくアイスが食べたくて一目散で駄菓子屋さんに走って行った。
オレンジ味のアイスキャンデー、パイン味もあった。ソーダ味もあったっけ。 いつもは一本しか買えなかったけど今日は二本買えるんだとわくわくしていた。
冷凍庫に顔を突っ込むようにして選んだ記憶がある。 そうしてすごく得意げにお店のおじさんにそれを差し出したのだった。
そうしたらなんということでしょう。おじさんが笑いながら「一本だけ」ね。 それがどういう訳なのかわからなくておじさんが意地悪言ってるのかなって思った。
その訳はすぐに分かった。私の持って行った10円玉は穴の開いていない5円玉だったのだ。
なんと恥ずかしいこと。こんなことがあっても良いものかと戸惑う。 抱きしめるように持っていたアイスを仕方なく一本戻す。 もう顔から火がでているような気がした。暑くて暑くてたまらない。
それが戒めとなったのかもう二度と母の財布に手を出すことはなかった。 母に打ち明けたらきっと叱られる。それはもう50年もの「秘密」となった。
暑い暑い夏が来るたびにその「秘密」を思い出す。
すごく恥ずかしくて苦い思い出なのに、なぜか微笑ましくてならない思い出。
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