夜中に雨が降っていたようだが日中は曇り。
時おり薄日が射してずいぶんと蒸し暑かった。
紅い彼岸花に黒アゲハ(蝶)が止まっているのを見た。
その色のコントラストにはっとして胸がどきどきする。
よく写真でも見かけるが黒アゲハは彼岸花が好きなのだろうか。
蜜を吸っているのならそれはどんな味がするのだろう。

義父がやっと面会に行ってくれる。
よほど思いがけなかったのか母がとても喜んでくれたそうだ。
「ご飯は食べよるかよ?」と訊いたら「食べよるよ」と応えたらしい。
嘘だと分かっていても何も言えなかったそうだ。
話しているとやはり呼吸が荒くなりしんどそうになるのだが
酸素マスクは嫌だと母が拒否したと云う。
医師との面談もありこれ以上の治療法が無いこと
日に日に衰弱していくのを見守るしかないのだろう。
施設側は病院と連携し「看取り看護」を行うことになった。
「持って今月いっぱいでしょう」医師からそう告げられて
義父はさすがにショックな様子を隠せずにいた。
私はどうしたわけかさほどショックを感じない。
それだけの覚悟が出来ているのかも定かではなかった。
ただ「もう逃げられない」と思う。追い詰められているのだろう。
遅かれ早かれその時が来るのだ。もう受け止めるしかないと思う。
母の死装束に着物を持って来るようにと頼まれたらしいが
どうしてもそんな気分にならなかった。間に合わないかもしれない
そう思っても箪笥から着物を出すその行為が出来ないのだった。
挙句に昨夜もここに記したが母のミラクルを信じている。
まるで母が不死身であるかのように思い込んでいる。
矛盾しているが「そんなことがあるわけがない」とも思っているのだ。
どちらにせよ母の死は決して免れない。
覚悟とはいったいどう云うことなのだろうか。
私は本当に覚悟しているのかどうか分からなくなってしまった。
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