9月も残りわずかとなり信じられないような暑さ。
日本国内では猛暑日だった地域もあるようだ。
長期予報では10月になっても暑い日があるとのこと。
今年の冬は暖冬になるのかもしれない。
今日も仕事を終えてから母に会いに行く。
一足先に義父も来ており一緒になった。
義父は約束通りに葡萄を持参しており母に食べさせていた。
「美味しい」と母。どんなにか嬉しかったことだろう。
昨日の今日で母の笑顔を見られて私も嬉しかった。
母に訊けば昨日私が来たことを全く知らなかったと言う。
おそらく眠っていたのだろう。なんと人騒がせなことか。
今日はそれも笑い話になったが冗談ではないと内心思った。
母に会う前にケアマネさんに着物を届ける。
衣装持ちの母はそれは沢山の着物を箪笥に仕舞っており
どれにしようと迷ったが母の好きな紫色の付け下げにした。
義父が言うには一度も着たところを見たことがないと。
初めて着る日が死装束とは皮肉なものだなと思う。
着ている母の姿が目に浮かぶ。もう微笑むことも出来ない。
お化粧は看護師さんがしてくれるそうだ。それを聞いてほっとした。
必死の思いで生きようとしている母がいるのに
死に支度をしている私はやはり薄情な娘なのかもしれない。
医師は相変わらず「今月いっぱい」だと言う。
その言葉がとても残酷な響きとなり耳に残り続けている。
明日明後日のうちに母は死ぬのだろうか。とても信じられなかった。
急変する可能性がとても大きいのだそうだ。
そんな医師の言葉に義父は憤りを感じるらしく医師を悪く言う。
「もういいよお父さん」そう言って今日も宥めたことだった。
母は義父の持参したモンブランを二口。葡萄を4粒食べた。
そうしたら急に便意を催しトイレに行きたがった。
けれどももう便器に座ることが出来なくなっているのだそうだ。
介護士さんに説得され寝たままオムツにすることになった。
それがどうしても出ない。歯を食いしばりながら踏ん張る母。
義父と私とで「頑張れ」と声を掛け続けたがやはり出なかった。
「もういい、糞はいい」と母の機嫌が一気に悪くなる。
「このクソ野郎め」私がおどけて言っても母はもう笑顔を見せない。
力んで力尽きたかのように母がうつらうつら眠り始めた。
それを機会に私は帰ることにする。
「お母ちゃん、もう帰るよ」と耳元に声を掛けたら
思いがけずに「早く帰って家のことをしたや」と言ってくれた。
家族の多い私のことをいつも気遣ってくれる母がそこに居たのだ。
義父は母が眠ってしまうまでもう少し傍に居てくれると言う。
その言葉に甘えて私は先に部屋を出た。
その時なんだか逃げているような気がしたのだ。
逃げる?これは現実逃避なのかもしれないと思う。
現実を上手く受け止められずにいるのかもしれない。
遅かれ早かれ母は死ぬだろう。
私はその現実を受け止めることが出来るのだろうか。
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