ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2025年06月13日(金) 罪滅ぼし

曇り日。山里は霧の朝だった。

見渡す限りの田園地帯であるが幻想的な風景と化す。

霧は直ぐに晴れたが空はどんよりと重かった。


お隣の新築の家の隣にまた新たに家が建つのだそうだ。

今朝は基礎工事を始めており作業員の姿が見える。

以前は会社の廃車置き場であったがもう面影もない。

まさか住宅地になるなど夢にも思っていなかった。

母が生きていたらどんなにか驚くことだろう。


義父は今朝も姿が見えず田んぼに行っているようだった。

代掻きに使うトラクターが見当たらない。

昨日のうちに車検整備が完了した車があったが

義父が不在だと車検が出来ずすっかり諦めていた。

けれども気にしてくれていたのだろうお昼に帰って来てくれる。

車検を終え書類を整えると昼食も食べずにまた出掛けて行く。

「お昼を食べんかね」と声を掛けたら「それどころじゃない」と怒鳴る。

田植えを目前にしハウスの苗が枯れ始めているのだそうだ。

また焦りと苛立ちであった。無我夢中と云うより死に物狂いである。

予定通りに日曜日に植えるらしいがお天気も心配であった。

手伝いに来てくれる友人達の手前もあるのだろう

「雨は降らんぞ」とまるで気象予報士の口ぶりである。

ここまで来れば何としてもと思う。無事に田植えを終わらせてやりたい。


仕事を一段落させ3時前に帰路に就く。

自動車専用道路を時速90キロで走っている時だった。

突然反対車線から狸のような動物が跳び込んで来た。

人間なら自殺行為である。

交通量が多く急ブレーキを掛けることも出来なかった。

「どすん」と大きな音がし自分が撥ねてしまったことが分かる。

サイドミラーで確認すると微かに紅い血が見えていた。

ぶるぶると震えが止まらなくなり怖ろしくてならない。

コロシテシマッタノダ。何と罪なことをしてしまったのだろう。

狸に見えたがイタチだったかもしれない。

どちらにせよ自然界で生きている小さな命であった。

車は走る凶器である。悔やんでも悔やみきれない出来事となった。


帰宅して直ぐに夫に話したがよくあることなのだそうだ。

その証拠に道路上の動物の遺骸を何度も見たことがあった。

「たまたまお前だっただけ」そう云って慰めてくれる。

おかげで暗い気持ちからほんの少し救われたような気がした。


小さな命にも家族が居ただろうと思う。

夜が更けても山の棲み処にはもう二度と帰れない命であった。


※以下今朝の詩(子供の作文なような詩です)


       コンビーフ


    「姉ちゃんお腹が空いた」
    弟と一緒に夕飯を作る

    初めて買ったコンビーフ
    テレビで見て知ったのだ
    缶の蓋を開けるとお肉の匂い
    弟が「うまそう」とはしゃぐ

    さてどうやって食べよう
    レシピが思い浮かばない

    「姉ちゃんオムレツや」 
    卵を5個も割ってしまった
    無駄にするわけにはいかない
    立派なオムレツにしなければ

    塩胡椒お砂糖牛乳も入れてみる
    コンビーフを入れてかき混ぜると
    なんとなく美味しそうに見える

    バターなど無かったので
    フライパンにマーガリンを溶かす
    じゃじゃじゃと楽しそうな音がした

    父が帰って来て「なんじゃこれは」
    弟は胸を張って応えた
    「オムレツや」「コンビーフぞ」

    あまり美味しくはなかったが
    生まれて初めて食べる味だった

    弟は喜んでいる
    コンビーフコンビーフと
    お布団に入ってからも呟いていた


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