SAKURA'S STUDY DIARY
さくらのきままな毎日 一日一読一書 A reading and a writing for a day
アラブに生活している者として、アラファト議長の死去を書かぬ訳にはいくまい。 ちなみに、わが家では数年前から、彼のことを「じーちゃん」と呼んでいた。 それは、彼に特段の親しみを感じているとか、PLOを積極的に支持しているとか、そういうのではなく。いつでも、テレビに映る彼は今にも死にそうだったから。 アラブの権力者は、大概が70代を越えている。 若者は、ヨルダンのアブドラ国王とシリアのバッシャール・アサド(←数年前にお父さんが死んで権力を引き継いだ)。 みんなそろそろ後継者の心配をしなくてはいけないお年頃なのだが、その中でもアラファトじーちゃんは弱っていくのが明らかだった。政府のトップとしての鋭さもなく、ただの老人にしか見えなかったから。 もう、じーちゃんも長くないかも。 そういう、かわいそうな弱り方だった。 そんなことを、テレビに彼が登場するたびに囁いていたのだけど、パリに行く時、真っ白な手で投げキッスをする姿を見て、これは本当にヤバイと思った。そして、ロンドンでじーちゃんが死んだと知ったとき、本当にあっけない最後に、どんな権力者でも死は簡単に訪れるのだと思った。カイロに集うアラブの指導者達や、口々に死を悼むパレスチナ人の姿を映すニュースを見て、カリスマ的な指導者を亡くした彼らをちょっぴりかわいそうに思った。 でも。 そんな風に感傷的だったのは、ヘリコプターがラマラに着くまで。 我を忘れて、自分勝手にヘリコプターに突進し、取り囲む群衆達。それを押さえきれないセキュリティ。威嚇発砲もきかないし、棺を下ろすスペースすらない状態で、延々と30分以上。しかも、イスラム教では、日没までに棺から遺体を取り出して埋葬しなくてはならないのに、もう3時過ぎ。スペースを作るために群衆の中を車がめちゃくちゃに走るわ、ベレーを被った兵隊たちはただうろうろしているだけだわ、ヘリの扉を開けて階段を下ろすこともできないわ、なんか、もうね。 しかも、ようやく棺を下ろして、何とか車の上に乗せて運んでも、関係ない市民が一緒に車の上に乗って叫んでいるし。車の上だけならいざ知らず、棺の上にまでよじ登っているヤツもいるし。棺を運ぶはずの儀仗兵は見あたらない、車はどこに向かっているか分からない、「ノーセキュリティ、ホープレス(by BBC World)」な状態。大混乱じゃすまされない、まさに混沌。滅茶苦茶。 ……こいつら、やっぱりおばかさんだ。 なーんも考えてない、どうしたらいいかわかってない、おばかさんだ。 自分の感情だけに従い、周りのことも先のことも考えられない、おばかさん達だ。 無秩序な混乱に嫌気がさして、テレビは消した。 儀礼ばった埋葬だけが素晴らしいというわけではないけれど(でも、さくらさんの基準は儀式なのだが)。でも、ともすれば棺が奪われかねない状態にまで陥るってのは、どう好意的に捉えても大混乱以外のなにものでもないわけで。 じーちゃん亡き後、いったいこの人達はどうするんだろうと、かなーり不安になったのでありました。 ただでさえアラブ人は、外面的には一致団結しているように振る舞いますが、蓋を開けるとどこでも内部抗争大好きなので、寄り合い所帯の自治政府内で、好き勝手なことを言いだして、その上ノーオーガナイズで、空中分解しないといいけど。大丈夫なのかしら。 さて、ここまで読むとさくらさんはアラファトじーちゃんに対して好意的なようにも受け取れるが。 彼は確かにカリスマ的な指導者だったかも知れないが、元々はテロリストであり、さらに各国からの援助金を自分の懐に直接入れ、側近や親族に利益を分配し、自治政府内はかなり汚職がはびこっていることを追記して(奥さんはマネーロンダリング容疑がかけられているわ、じーちゃんは何故か世界で6番目にお金持ちな国家元首だわ、一族が利権を独占しているわ)。 さっさと和平が結ばれることを心からお祈りしております。 (ま、お互いに譲歩って言葉を学ばねば無理だろうけどね……)
AOISAKURA
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