次の場所は
フミンになろうか、トミンになろうか迷っている。
今日、久しぶりに君に話をした。
会社の移転と抱えている仕事で頭が一杯の君。
不動産会社に電話して、内見の約束をしていた。
そこには私の部屋については、一切含まれていない。
金曜から一人であれこれ探していた。
私だけが暮らす部屋だから、自分で探せということだった。
そして、事務所の移転には私がもれなくついていくものだと
決めている。
バカバカしくなった。
第二の選択肢があることをわかっていない。

フミンだった頃、部屋から街の中心部まで15分だった。
何でもある街は、何でも手に入る街と同じ意味ではない。
休みたければ、テラスカフェ。
服を見たければ、多種多様なショップ。
食事をしたければ、ホテルの最上階から出前まで、
和洋中を問わず揃っている。
ビデオを見たければ徒歩5分で借りられ、
美術館も図書館もすぐに行ける。
だけど、それはゆとりがあってこそ手に入るもの。
目の前にあるのに届かない。
無関係の世界でしかない。

トミンになれば、その数十倍の無縁の世界が
目の前に広がる。
そして手が届かない現実に、また打ちのめされる。
そして両方にあるのは、一歩横道に逸れると
オモテの健全な煌びやかさとは違った、汚濁や
退廃的な世界がある。
どうせ横目で見て通るだけなら、見知った場所がいい。

君が言う。

 戻ってどうするの?

私が答える。

 どうもしない。

この数年の目まぐるしさに疲れた。
私自身に起こった出来事、行く先々で遭遇する天変地異。
都会にいても、田舎にいても神経が休まったことはない。
穏やかに朗らかに元気に笑う。
君が望んだ姿を見せる時間が少ない。
君に嫌味を言ったり、辛辣になったりしている自分が
イヤでたまらない。
生きることに疲れた。

脈絡のない私の話をじっと聞いていた。

 どっちにするかじっくり考えたほうがいい。

そう言った後、君は電話をかけた。

 住居を探してください。

送られてきたファックスを二人で検討しているうちに
気が晴れてきた。

 ここも見てくるからね。

ここに来て、また1年足らずで、次の場所へ行く。

2004年11月15日(月)

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