不安が拭えない







大阪まで高速道路を乗り継ぎ、彼が実家の前まで迎えにきてくれた。
彼の車を見つけると、初めて彼に逢った日を思い出した。
彼は車から降りて、私のバッグを受け取ってくれる。

車に乗り込み、大阪市内を縦断した。
懐かしい風景を見ながら、彼に話し続けた。
二日酔いで、長距離を運転し、大阪市内を抜けることは
彼にとって大変疲れることだったのに。

郊外を走っていくと、雪雲が空を覆い尽くしていった。
コンビニで「震災時帰宅支援マップ」を買った。
助手席で地図を見ながらのナビは楽しかったよ。
この地図が、いつか大阪に帰った時のロードマップになってほしい。


彼のよく知る街に近づくと、私のPCの話になった。
彼が作ってくれた今のPCは、スペック的に物足りなくなっていた。
以前から彼も、作り直すか、新しく買い換えるかと考えてくれていた。
下見のつもりで、彼の行きつけの店に入った。

いつのまにか、店のスタッフや彼に欲しいものを話していた。
私は具体的に何がどうなのかわかってない。
だから「凄いの、強いの、丈夫なの」と言い、彼は呆れていた。

ケースは彼と色違いで。
店を出るときは、彼の手にはパーツの入った大きな袋。
この数ヶ月、ずっと明け方まで仕事をして、それなのに
時間を作って、私のPCを組み立ててくれる。
今日も明日も彼は仕事。

新幹線に乗るための駅。
その手前で車を降りると聞くと、とっさに過去が蘇った。
 
 あの駅で放り出すの?

 何、ばかなこと言ってるの?
 去年も、新幹線のホームまで見送ったでしょう。

去年と同じ場所で夜景を見た。
1年経過して、この日何度か涙を流したのは私だった。
彼を信じたいのに、疲れ果てて顔色が青白くなり、言葉少なくなっていく
彼の横に立っていると、またあの言葉が浮かんでしまった。

存在が重かった。

2年前の彼の裏切りは、今現在の彼じゃない。

私のために長距離を走り、迎えに来てくれた彼。
私のために、またパーツを選びPCを組み立ててくれる彼。
彼を愛しているのに、愛しているからこそ信じきれない。

彼がいなくなりそうな気がする。
どこかに消えてしまわないで。
ひとりにしないで。

私はきっと贅沢な勘違いをしてるだけ。

2006年01月08日(日)

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