2004年07月30日(金) |
不定期連載:セルピコさんのやりくり旅日記4(まだ悪霊オプション付だった頃) |
やれやれ、無事にご褒美を頂くことが出来ました。田舎で良かったです。馬上槍試合五十人抜きは疲れましたけど。 とあれ久々に街へ出てお土産、保存食、その他を買い込む事が出来ましたし、路銀もしばらく安心です。
「優勝だって、ピコリン凄いねえ」
パックさん。馬の耳の間に座って私に話しかけてきました。
「馬での試合もだけど、よくすらすら口上出てくるね。田舎の御領主さんも驚いてたじゃない」
ああ、あれですか「我が身は呪われた運命にて、この大陸を彷徨う定め。故に面頬を上げ高貴の方々へこの身をさらす訳にはいかないのです云々」ですか。私、聖鉄鎖騎士団に居たときは紋章官って仕事してました。下世話言い方ですが、紋章官はしゃべってなんぼの仕事なんです。
「ふ〜ん、しゃべるのが仕事?」 ええ、まあ、式典で派手な格好しましてね、偉い方々の前で口上のべるとか、式典の進行役務めたり。今日のトーナメントでも、派手な格好して騎士の家柄とか紹介してた方がいたでしょ?あの方々が紋章官で、本来なら私もあっちの仕事なんですけどね。 とガッツさん達の待つ所へ戻る道々パックさんに話してましたが、途中で話に飽きたらしくパックさんはうなずきながら早速何か食べてました。
さて一行の姿が見えてきました。ファルネーゼ様とキャスカさんが出迎えてくれます。私はまず、女性二人への土産を携えて馬から下りました。
「ただいま戻りました、ファルネーゼ様」
「まあ、セルピコ、この薔薇の花束はなんなのです?」
ファルネーゼ様とキャスカさんへのお土産です。女性にはやはり花でしょう。
「嬉しいわ、いい香り‥‥。こんなに薔薇の花が綺麗に思えるなんて、久しく無かった様な気がします‥」
心中複雑です。これがつい先日まで私の頬をひっぱたいて鼻血を出させたり、その昔、お花を摘んで差し上げたら階段の上から私を突き落とした人の言う事でしょうか?(汗)。最近、ファルネーゼ様はこんな調子で私は少々戸惑っています。 いえ、私はマゾって訳じゃないので、以前の様な扱いをされたい訳ではありません。でも不気味です。空から魚でも降ってきそうで不安です‥‥。 キャスカさんも、花束には別の意味で喜んで下さっている様です。楽しそうに花びらをむしっています。
「ようよう、セルピコ、俺らには土産とかねえのかよ?」
イシドロさんとガッツさんがやってきました。はいはい、ありますよ、イシドロさんには新しい服と食べ物です。お、嬉しいじゃねえかとイシドロさんも喜んで下さいました。
で、ガッツさんへ、男の方にはお酒と思ったのですが如何ですか?
「わりいな、俺にまで気を使わせて。有り難く頂くけどよ、あんたもどうだ?俺はこう見えてもそんなに酒が好きな訳じゃねえし」
あ、そうだったんですか。ミッドランドの方だし、外見からてっきり酒がお好きなのだとばかり思い込んでいました(汗)。
中略
陽が落ちたら化け物が出るし、酒が入ってたんじゃ喧嘩にならねえとの事ですので、明るいうちにガッツさんと二人でささやかな祝杯をあげる事にしました。 女性二人は薪拾いに、イシドロさんは剣の稽古でもしている様で姿が見えません。居たとしても、未成年にお酒はあげられませんけど。 しかし私もガッツさんもそう飲める方ではなかったのです。なんとなく、男二人でちびちびやっていました。‥‥‥お通夜みたいです。
「パックが言ってたぜ。あんた、槍試合も凄腕だそうじゃねえか」
「‥‥そうでもないです。コツをつかめば案外簡単なモノですよ。実際の戦ではありませんから‥‥」
「ふ〜ん」
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥私、ファルネーゼ様の事が絡まなければ、貴方の事を消えて頂きたいとまで考えなかったと思いますよ‥‥」
「‥‥因果な事だな」
追記:剣の御前試合。ドラゴン殺しが規格外だったためガッツさんの出場不可。
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