限定鼓動

2004年10月21日(木) 現実

「お前は何の我慢もしてないだろうが」
そう云われて、じゃぁてめぇは何我慢してるっつーんだよ、と
云い掛けて黙った私は、我慢した方だと思います。笑


誰の所為で死んだとか、
母親を亡くすことと娘を亡くすことのどっちが重たいだとか
今更、云っても仕方ないと誰もが判ってるのに
つい、口をついて出てしまう。
それを皆、判ってるから、最初は黙って聴いてやるけど
所詮、家族と云えど他人事で自分がいちばん辛いと皆が勝手に思ってる筈だから
いい加減、鬱陶しくなるもので。

泣いて喚いてそれでいいなら、そうしてるよ。
それで母さんが帰ってくるなら、ずっと延々そうしてるよ。
アンタの云うてることは、自分本位過ぎだ。
自分だけが辛いと思ってる。


何にも無いから、墓石も仏壇もすべて用意すんだよ。
49日に間に合うようにと、誰が必死で動いてると思ってんの。
母さんが居なくなった分の収入は誰が補う?
母さんがやってた家事一切、今、誰がやってる?
母さんが居ない現実を、皆、どうやって昇華してると思ってる?
皆、アンタと一緒なんだよ。
どうしようもない憤りや後悔や、そんなもん全部抱えて一人一人がやってんだよ。
起きて泣いて、誰かに当たって、また泣いて寝て…って
そんなん繰り返して生きていられる程
現状把握できない大人じゃないんだよ、皆。
そうやって押し込めて、それぞれの仕事を淡々とこなす私らの姿は
アンタから見たら、どうしようもなく薄情な姿だろうけどね
母さんが綺麗に片付けてきた部屋、維持してやろうと思うのよ。
一生懸命、一人で考えてやってきた家計も
しっかりキチンとやってやろうと思うのよ。
何がどこにあるか全部書いてあったお陰で、自分でしたことない衣替えもちゃんと出来たでしょ。
それぞれ収支の内訳や各々の引き落としの口座と暗証番号、正式な印鑑や書類の場所
全部書いて、事前に教えて私に預けてったんだ。預けてってくれたんだから
じゃぁそれを、それくらいはせめて、しっかりやってやろうと思うじゃない。


後悔せん訳ないでしょ。


けどね。
アンタが泣いてる姿を、いちばん嫌がったよ、母さんは。


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陽 [MAIL]