限定鼓動

2011年03月04日(金) 救えない

同僚が腕を切ってる。
過呼吸を起こす。
夥しい赤い線を描く傷痕と
呼吸数は比例している。

自分が辿ってきた道を
このまま辿るんではないか。
あたしより5年近く若い歳で
そのままあたしの5年前を行くのではないか。
不安になった。

あたしの傷は、重ねるごとに深くなった。
今では必ず静脈を切るまで、リストカットの意味を成さない。
彼女の傷は、まだ引っ掻いた程度だ。
それが深くならない保証はない。

彼女の言葉の端々に
自分の影を見るようで
それでも彼女は別物だ。
自分と同じな訳じゃない。
けれど、何も理解できない周囲より
彼女の痛みがわかるのに
わかる筈なのに
あたしは何も救えない。
何もしてやれない。

何の為の痛みだ。
どうして彼女の悲鳴に気付いたのに。

あたしは、無力だ。




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陽 [MAIL]