ぶらんこ
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ゼローム神父さまのことを実はよく知らない。 母から「ゼローム神父さまはね」というようなことを何度も聞かされたので、名前は知っている。という感じ。 父が病床にいた頃にしょっちゅう病室まで来てくれたこととか、兄が亡くなる前に赦しの秘蹟を授けたこととか。 わたしも幼い頃、ゼローム神父さまに抱っこされたり頭を撫でられたりしたみたいだ。
ゼローム神父が亡くなられて3年が経った(らしい)。 今日、母のところへゼローム神父さまの記念誌が送られてきた。 大きな立派な本だ。 ゼローム神父が奄美に来た当時の古い写真から最近のものまでたくさん載っている。 わたしの村の教会の落成の写真もあった。今はもうない父たちが建てた教会だ。 知ってる人たちの顔もたくさん。 でも、父の姿はなかった。 ページをゆっくりとめくりながら何度も何度も父の姿が映っていないか調べたが、やはりなかった。 兄の話によると、彼はカメラを持って撮影する側だったらしい。 父らしいなぁーと、思う。
ゼローム神父さまのことをあまり知らないけれど、なぜか特別な存在だ。 不思議と名前を聞くだけでドキドキする。 なんなんだろ、これは。
ゼローム神父の記念誌への寄稿で、わたしたち(兄弟姉妹)の心と非常に通じるものがある言葉を見つけた。 「ゼローム神父さまはわんなんかのことムール知っとるっちょ」 といった下り。(まだまだ続く) かの島尾伸三氏の言葉だ。 読みながら、泣き笑いだった。彼の言葉はいつだってすごい。最高。 この言葉を聞いて苦笑するひとは・・・たぶんわたしたちと同じような気持ちなのかも。
ゼローム神父さまは島口をこよなく愛したひとだったという。 写真のなかの彼は、いつも大きな笑顔を見せている。
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