ぶらんこ
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宇宙ステーションで暮らしている。といっても、内部はどこかのホテルのよう。 老婆がちいさな宇宙船で旅行に出ようとしている。長い間帰らない夫のところへ行くのだという。 目の見えない老婆。目に見えぬものを見ることのできる老婆。 わたしは老婆がきっと夫には会えないだろうという気がして、何か声をかけようと思うのだが、 そんなことをいう意味なんてないじゃないか、と思い、やめておく。 わたしの考えも人々の考えも、老婆はすべて知っている。
宇宙船には少年もひとり乗り込んでいる。 ふたりが知り合いかどうかはわからない。 どこの惑星へ向かうのだろう。
ふたりのことが気になって、わたしは遠くからずっと眺めている。
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