ぶらんこ
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面接のために出かけていく。 都心の、ある庁舎のような所。国籍に関する面接だ。
窓口で申し込みをする。 まだまだ時間がありそうと思い、待ち時間の間、外を散策することにした。 そのとき、職員があるポスターを壁に貼りだした。禁煙のためのポスターらしい。
「5円運動実施中!」 大きく書かれたその言葉とともに、カラフルな花が描かれていた。 よく見ると、その花はチュッパチャプスが並んで出来たものであった。
これでは反則の罰が軽すぎるんじゃないか?と、褐色の肌の男性らが話している。 わたしも同感。 喫煙者が5円出してチュッパチャプスを買わされる。はたしてこれで禁煙に繋がるのだろうか??? まだまだ日本は喫煙天国なんだなぁ・・・と妙な納得をする。
樹の下に寝転がっていると、わたしの名前を呼ぶアナウンスが聞こえてきた。 通された小部屋には6人ほど集まっていたが、わたしが入ったと同時にひとりかふたり、部屋を出て行った。 壁際に椅子が用意されている。座っている者、立っている者、それぞれである。
ひとりの女性が「葬儀なんかの時にはこの保険があるから助かる」といったことを話している。 それを聞いていたふたりの女性は強く同意している。 別の誰かが幾らくらいなのか訊ねると、ひとりが簡単なメモを手渡す。もうひとりは、「まったくあなたはきちんとしていないんだから・・・」と茶化している。
目の前に置いてあったパンフレットには、国籍取得後の例が紹介されている。 老夫婦の暮らし、本名の代わりに偽名を使った場合、ホテル支配人の嫌がらせ、幸福な人生とは・・などなど。
思いきって、隣の女性に声をかけてみる。 「国際結婚と国籍って、何か問題があったんでしたっけ?こういうの、大昔に来たような気もするのですが・・・」
そうこうしているうちに奥部屋にて個別の面接があるらしく、ひとり呼ばれて行った。 現れた担当官は、「もうすぐ夕食だから急ぐわよ」と冷たい表情で言い放ったが、それにしてはなかなか次の人が呼ばれない。
どうでも良いような気分になり、また外へ出て待とうと思う。 辺りは夕暮れ迫る頃。わたしはビルの屋上へ来ている。 道路には、帰りを急ぐ車の列が音もなく動いていて、まるで別世界のように見える。
雲が多い。桃色から橙色の綿雲が浮かんでいる。 寝転がると、自分のためだけに天空が拡がっているようだ。
突然、どこからか巨大な2組の男女が現れ、綿雲のなか笑顔で歩いている。 また政府の広告だ。最近は天空を使ってのものがやたら多い。 なんの広告だったのやら。特別な関心を寄せずに見ていたが、彼らが通り過ぎた後に雲が動き始めた。 綿雲はそれぞれ行くべき場所がわかっているかのよう。だんだんと集まり、形を成す。
まずはピラミッド。 天空に、巨大なピラミッドが中央に大きくひとつ、その後方にちいさくふたつ現れた。 その様子は圧巻で、ため息が出てしまう。 しばらくすると雲はまた動き始め、フェニックスが飛び立った。 周囲にいた人達は大きな声をあげ、喜んでいる。(いつの間にか屋上は多くの人で溢れていた) わたしも胸がドキドキし、嬉しいような熱いような気持ちが沸き起こる。
フェニックスが飛び去ると、小さな星がひとつふたつ瞬き始めた。 天空は少しずつその色を変え、夜の帳が下りてくる。 静かな気持ちになってそれを見ていると、そこへ巨大なのび太君が笑顔でやってきた。 ドラえもんもいる。彼らは、黄色や赤のアニメらしい花を振りまきながら歩いている。 思わずのび太君に手を振る。(手を振ってしまってから、ちょっと恥ずかしくなる) すると、のび太君はわたしを見て、手を振り返すではないか。 おーーーコンタクトも可能なのか!!と、心底驚いてしまう。 やるじゃないか、政府。
のび太君たちが去った後、頭上には満天の星空が残った。 いつの間にか人々も去り、わたしはひとり、星空に浮かんでいる。
am03:40, 08/15/2008
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