ぶらんこ
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巨大な高い岩をよじ登って、その向こう側にある海岸へ行くところだ。 それはそれは山のように大きな岩だった。
岩の天辺は見晴台のようになっているのか、白い柵が続いているのが見える。 あそこまで行けば後は簡単なんだ。 わたしは奮起して岩を登り、なんとかそこまで辿り着いた。
そのときなぜか、あぁここはお城だったんだ・・・と思い出した。 ぐるりと周囲を見渡せるように張り巡らされた城壁。 紺碧の水平線がくっきりゆるやかに曲線を描いている。
突然、足元がぐらり、と動いた。その途端、バラバラと白い塊が砕けて落ちていくのがわかった。 思わず両手に力を入れ、岩にしがみつく。 辛うじて、足場はまだ崩れ落ちてはいない。でも、なんとも頼りなげである。 とにかく2〜3歩移動しなければ・・と思う。 頑丈なところへ移り、この場の早急な修理を頼まねば。 誰に頼めば良い?信用できる人間でないと。そうだ。彼にしよう。彼なら大丈夫。
心のなかで、老齢の男性を思い浮かべる。わたしは彼のことをよく知らないが、彼はわたしのことをよく知っている。 物静かな彼にいつも助けられてきた。あぁ彼のことをもっとよく知ろうとすれば良かった。
足元を見ないように、と心のなかで言い聞かせる。 が、気持ちとは裏腹に、ふと足元を見てしまう。
くらっ と した。
なんて高さなのだろう。 はるか彼方に透き通るほどに美しい海面が見えた。 打ち寄せる白波は、渦となって泡と消える。その音がこちらまで聞こえてくるようだ。
風が強くなる。 わたしはくらくらして目をつむり、四肢に力を込める。 早くここを動かなければ、と思うのに、指一本、動かせない。 目をつむっているのに、瞼の奥に、打ち寄せる波が見える。
海に抱かれる前に、きっとわたしは意識を失うだろう。
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