2004年08月22日(日)_
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乗鞍2日目

2日目は気合いを入れて4時半起床6時出発をして朝靄の中を乗鞍ヒルクライムと行きたかったが、さすがに起きることができずに6時頃起床した。
実に久しぶりにテントの中、シュラフの中で目覚める。耳栓をとると「サー…」という水の流れる音がした。近くに小さな滝のようなものがあるのだろう。きっと一晩中この音はしていたのだろうが、耳栓効果でまったく聞こえなかった。
朝飯は昨日の夕食に続いてスパゲッティ。2食分買っておいたので、この朝食で食べきって、ちょうどいい。たらこのトッピングも2食分で正にぴったり。
お湯を沸かそうとしたらガスが切れてしまったので、走り屋さんのガスを借りてスパゲッティを茹でた。パスタがゆであがったばかりの香りが、2年前のロングツーリングを思い出させてくれる。いい香りだ。
スパゲッティとクロワッサンと「朝食バナナ」なるゼリーを朝食とし、朝食が済むと荷物をまとめ、テントを畳む。昨日、駐車場からキャンプ場まで荷物を持って移動するのが死ぬほどきつかったので、2回に分けて車に運ぶことにした。
遊歩道は相変わらずいい景色が続く気持ちのいい道だったが、昨日と違って空は曇っている。でも、雨は降らなそうだ。車に荷物を詰め込むと、まずは乗鞍温泉近くの無料駐車場へ。
駐車場にやってくると、他にも自転車乗りがけっこういた。自転車を降ろしてセッティングし、アームウォーマーやレッグウォーマーなどを着込む。
準備運動などを済ますと、走り屋さんはクリートの調整をしていた。昨日クリートをいじったけど気にくわなかったようで、元に戻したと言っていた。
午前9時半頃、出発。スタート地点の標高は約1400m。灰色の空の下、エコーラインを走り出す。昨日走ったばかりなので、中盤までコースは覚えている。
乗鞍の道は、あまりに景色がいいため、昨日見たばかりの景色でも、今日見るとまた感動する。何度見ても壮絶な景観だ。スタートしてすぐ、遙か上の方の山肌に続く道が見える。今日こそはあそこまで走るぞ。
マイカー規制のゲートを過ぎてしばらく上ると、乗鞍高原を見下ろせる開けたところがある。昨日ここから見えた景色もよかったが、今日の朝霧が山々に立ち籠める水墨画のような景色がとてもよかった。
気になる景色がある度に止まって写真を撮ったりして、今日も気ままに上っていく。先に出発していたサイクリストを数人挨拶をして抜き、上から下ってくるサイクリストともかけ声を交わす。
マイカー規制のおかげで、ここは自転車天国。バスやタクシーがたまに通るが、それ以外は車を気にすることなく、気兼ねなく走っていける。道幅が狭い部分もあるので、そこでバスに鉢合わせたら、止まってやりすごした。
所々に「ここから280m すれ違い困難」(○○mは変化する)という看板が立っているが、最初何となく見ていたら「ここから280m すごい困難」と書いてあるように見えて、「ここからきつい坂になるのかぁ」とか一瞬思った。
昨日時間切れで渋々引き返した山小屋を過ぎると、いよいよ今日初めて走る道に突入。そこまではこれから走るであろう道を見上げて驚いていたが、ここからは今まで走ってきた道を見下ろして、その壮大な眺めを楽しむ。
曲がりくねった道が、山肌の緑の中を蛇のように走る。眼下の道には、先ほどすれ違ったサイクリストが下っているのが見える。上ってきているサイクリストも見える。
朝早く上った、もしくは岐阜県側から上ってきたサイクリスト達が、けっこう頻繁に下ってくる。荷物を持っていない身軽なロードレーサーもいるが、キャリアに荷物満載の合宿装備のサイクリストも結構いて驚いた。
ポツポツと雨が降ってきた。最初は小雨でさほど気にならなかったが、そのうち普通に降ってきて、ちょっとブルーになった。しかし、しばらく走っているうちに雨は止んだ。
通り雨のようだったが、下を見下ろすと雲が見える。低い雲より高いところにやってきている。頭上に見える雲も、近く感じる。曇っているからこそ、標高の高さをより感じることができた。
いよいよ頂上が近くなると、景色が一変し、高山植物が広がる別世界になった。霧が辺りに広がり、夢の中のような、現実感の薄れた感覚になった。本当に別世界を走っているようだ。
標高2600mの大雪渓までやってくると、8月の中旬だというのに雪が残っている部分があった。そして、そこには人がいた。登山や写真が好きな人達だろうか。
辺り一面雲に覆われ、下界は全く見えない。晴れてどこまでも眺められるような景色も見てみたいものだが、これはこれで幻想的な世界を楽しめる。
いよいよ頂上が近づく。霧が道まで包み込み、先が見えない。霧のモヤモヤした中を走っていくと、ついに頂上に到着した。ここは長野県と岐阜県の県境。岐阜県には初めて来たので、とても新鮮だった。
ちょっと下って鶴ヶ池の周りに続く道を走ってレストハウスへ向かう。乗鞍頂上には、サイクリストの姿がたくさん。上りきった達成感に浸っているので、みな爽やかな顔をしている。
大勢のグループがいたが、中でもけっこう年のいったグループの中で70歳くらいのおじいさんがいたのが印象的だった。あんな年でも乗鞍を上るほどの健脚を維持しているのは素晴らしい。
昼時ということもあり、レストハウスで昼食。ちょうど朝食のエネルギーをすべて消費して腹が減っていた。寒いので、暖かい物を食べる。おれは豚肉の生姜焼き定食を食べたが、これが火の燃料が少なくて途中で火が消えてしまった。ギリギリ火は通ったが、ちょっと心配だった。
腹ごしらえを済ませて、100円の有料トイレで用を足し、レストハウスを後にする。乗鞍スカイライン側へ向かうと、「(下り)気をつけてね〜」とサイクリストが声をかけてくれた。
乗鞍スカイラインは、おれは当然のこと、乗鞍のヒルクライムレースに出場している走り屋さんにとっても初めての世界。2人でワクワクして下り出す。
下りだして100mほどでストップ。いきなりいい景色が広がっていた。写真を撮って下り出すが、またすぐストップして写真を撮る…。あまりに景色がよすぎて全然先に進めない。
辺りは霧に囲まれていて、道にも霧が覆い被さっているので先が見えない。それでも、緩やかな緑の斜面に続く1本の道の景色が、とても素晴らしかった。
止まって写真を撮り、走り屋さんに先に出発してもらって、道と共に入っている走り屋さんをFZ2の望遠で撮影。カメラをしまって下り、今度は走り屋さんがおれを撮ってくれる。しばらく先でまた止まって写真を撮って…というような事を繰り返しながら走っていった。
下りの後半は霧が濃くて展望はなくなり、下りに専念した。直線ときついカーブの連続で、勾配もきつくてかなりスピードが出る。ガンガン下っていると、バスに追いついてしまった。
しばらく止まって時間差を作ってから下ったりもしたが、すぐバスに引っかかってしまう。なかなか抜けなくてもどかしかったが、工事の信号で止まった所で抜けたのでよかった。
標高1684mの平湯峠まで下ると、T字路を右折。ここからさらに下るが、この道が道幅が狭く、勾配がきつく、カーブはRがきつく、それでいて車が急にやってくるので、けっこう気を遣う道だった。
R158まで下ってくると、さらに少し下り、安房峠道路トンネルの交差点からは再び上りが始まる。標高1200mほどまで下ってきたが、ここから1790mの安房峠まで上る。
それまでひたすら下っていたので、上りが非常にだるく感じた。安房峠は、8%ほどのややきつい上りが続き、かなりきつかった。この辺りは山々に囲まれて自然が濃く、すごい所を走っているなぁと思った。
きつい上りが一瞬緩やかになったところで、道路に座り込んで休憩。2人ともかなり足にきていた。そこからもまた勾配がきつくなってきつかったが、最後に緩やかになり、安房峠に到着した。ここからは再び長野県。
安房峠からの下りは、交通量は少ないものの、勾配とカーブのRがきつくて気を遣う下りだった。特に後半のヘアピンカーブの繰り返し区間では、カーブ部分の路面が恐ろしく悪く、荒れた路面でパンクしないか心配だった。
安房トンネルの出口に合流した後も、R158を下り続ける。ここからは車が多くなり、さらにトンネルが多くなるので注意が必要だ。ここも路面が悪くて、かなり恐かった。
しばらく下ったところで白骨温泉への入口にやってきた。ここからは県道を白骨温泉へと向かって上る。白骨からは上高地乗鞍林道で車のある乗鞍高原まで走ることになる。
地図上から、この道はかなり坂がきついのではないかと想像していたが、まさにその通りだった。平均勾配10%近い激坂が続き、部分的には15%の壁のような区間もあった。
乗鞍と安房峠で疲労が溜まっている体に激坂の追い打ち。2人ともいっぱいいっぱいだ。とどめに、雨が降り出す。ここから本当に辛い上りが始まった。
上高地乗鞍林道に入ってからは、それまでと比べると勾配はやや緩くなったが、足が限界に近いので、きつさは同じだった。雨のせいで景色もなくなり、体にも心にも余裕がなくなり、2人とも無言でただひたすら下を向いて走っていった。
気温はどんどん下がり、16℃ほどまで下がる。雨で体力の消耗が激しく、ときどき小休憩を入れながらでないと先に進めなかった。雨宿りできる場所は1つもなかったので、休んで止まっているときもずぶ濡れだ。
疲労と雨のせいで、かなり限界の領域まで追いつめられる。もう全てがどうでもよくなってきた。過酷な状況を楽しむ余裕すら残っていなかった。ただただ、寒さと雨と疲労に耐えて、重たい足でペダルを回すしかなかった。
4kmが40kmにも感じたが、やっとのことでトンネルに到着。1kmの長さの真っ暗なトンネルに入ると、ようやく雨宿りができた。しかし、ここでじっとしているわけにはいかない。とにかく体が冷えてじっとなどしていられない。
トンネルを抜けても、相変わらず雨が降り続けている。それまでは上っていたから多少は寒さが和らいでいたが、ここからは下りなので雨や汗で濡れた体が風で一気に冷やされ、寒さが一段と厳しくなる。
雨で路面が濡れているため、スピードを出す事ができない。ここまでがんばって上ってきたが、その分下りを楽しむことすら許されなかった。常にブレーキをかけながら、慎重に下っていった。
なんとか無事に料金所まで下ってくると、この雨の中、凍えながら下ってきたサイクリストへのお情けか、料金はとられなかった。もともと自転車は無料なのかどうかは不明だけど。
料金所は車の停めてある駐車場の裏。もうゴールはすぐそこだ。長く辛い旅のゴールにやってきたと思うと、すごく嬉しくなり、駐車場でツールのゴールのようにガッツポーズをとった。
車に自転車を積み、少し走ったところにある温泉へ。すでに体が冷えきってしまって、生きた心地がしない。早く熱い温泉に浸からないと、本当に死んでしまいそうだ。
あまりに体が冷えていたため、温泉に入っても表面だけ暖まり、体の芯は寒気がした。しかし、時間が経つにつれ、少しずつ体の芯まで温まることができた。
温泉に入って生き返ると、帰路へ。土砂降りの中、松本市街へ向かう。松本のハンバーグ屋で夕食を食べて腹を満たして車に戻ると、怪しいおじいさんがうちらの自転車を眺めていた。
自転車泥棒か? と疑って近づくと、どうやらこのおじいさんも自転車乗りで、興味本意で見ていたのだという。話を聞くと、昔は競輪学校にいた頃もあって、70歳の現在も自転車に乗るという。元気なおじいさんだ。
松本ICから中央道に乗り、神奈川へ向う。雨がかなり激しく降り、ここでフロントガラスに塗ってあるガラコの威力を目の辺りにする。最後は事故の影響で渋滞にはまったが、上野原ICを下りてからは裏道を活用して時間短縮できた。
街灯のない真っ暗な山梨の裏道。路面から湯気が出ていて、まるで死後の世界のようだった。おばけが出てきても不思議ではない恐い雰囲気の中、走り屋さんはガンガン飛ばしていった。1人だったら恐くて通りたくない状況だ。
大和まで帰ってきたときは、すでに日付が変わっていた。走り屋さんが帰宅したのは、さらに遅いはずだ。送り迎えや自転車と荷物の輸送など、走り屋さんには大変お世話になった。
今回のランは、普段なかなか走る事のない乗鞍を走り、その景色を満喫できたのがよかった。最後は激坂と雨で死にそうになったが、それも終わってみればいい思い出。もうあんな辛いのはこりごりだが、とても走り応えのあるランだった。
乗鞍は素晴らしい所なので、年に1度は行きたい。そして、今回キャンプの楽しさを思い出したので、やはり次回もキャンプをしてアウトドアも満喫したいところだ。
地図:■ データ:■ 走行距離:75.9km 走行時間:4h 40m 39s 平均速度:16.4km/h 最高速度:67.1km/h 上昇距離:2340m 積算距離:6256km(ロード) カロリー消費量:1325kcal 身長/体重:178cm/53.0kg
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