ある年の初秋。 私は、転職の為、ある会社を面接に訪れた。
パーテーションで区切られた、商談室の一角 少し緊張しながら、今か今かと、面接官であるその会社の社長を待っていた。
「どんな人たちが、働いているのだろ」 「仲良くやっていけるだろうか」
まだ、決まりもしていないのに、中で働く自分を頭の中で ぐるぐると思い巡らせていた。
なんだか、社内は、商談やらなにやらで、あわただしかった。
「まだかかりそうだな・・・・」 そんなことを考えていると、 一人の男性が、私の座っているテーブルの一角に突然飛び込んできた。
この人も面接官?・・・と思うが否や 「あっ!すみません」 そう言って、瞬く間に、私の視界から消え去っていった。
あぁ、商談の場所を間違えただけだったんだ・・・・・
その人は、真っ白なシャツに、薄ベージュのチノパン、自然に流した無造作な髪の毛 爽やかな好青年というイメージだった。
「合格・・・」
私は心の中で、微笑んだ。
全く、面接に来てるくせに、男の値踏みとは、じつに不謹慎きわまりない。 しかし、緊張しながら長い間待たされていたのだ。 退屈しのぎに、これくらいのことは、誰だって思うでしょう?
まさか、こんなかる〜い気持ちが、これから起きる数々の辛い出来事の根源となることなど、その時の私に 知るよしもなかったのである。
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