2003年08月18日(月) |
第16章 part2 醜い女 |
尋常な行動をとれなくなり、理性を失った私は、 嫉妬心を抑えきれなくなっていた。
社内で仕事中、みかちゃんと彼が二人で、打ち合わせをしていても、 彼の事が気が気でならなかった。 パーテーションで区切られた一角から、楽しそうな笑い声が聞こえるだけで、 私の心は深く沈んだ。
ちょうど、私たちの仕事は、最盛期であった。 新しい企画を打ち立てて、どんどんバイヤーにプレゼンして行く時期、 必然的に、彼と同じブランドのみかちゃんは、彼と行動を共にする事が多くなった。
勿論私も、プレゼン用の企画をどんどん提案しなくてはいけない立場だったが、 そんな気分にはなれなかった。
嫉妬心だけは、私の心で日増しに巨大化していった。
私は、次第に「都合のいい女」では、いられなくなっていった。 それどころか、社内でも、嫉妬心をあらわにした。
言葉にこそしなかったが、彼が、みかちゃんと楽しそうに話しているだけで、 不機嫌になり、わざと、バタンと音をたてて戸を閉め、その部屋から出て行ったり、 彼が、出張の時は、その出張先から彼が、社内に連絡を入れてくる時間を見計らって、 まるで、電話番のように、電話をとりまくった。
こうなると、私たちの関係が、社内でも単なる噂話が、 確信となってしまうのは、明らかである。
もう、周りの目を意識しなければならないという理性さえ、失っていた 自分の中の何かが壊れていた。
ついに私は、ただの醜い女へと化した。
業績は、一気に目に見えて、落ち始めた。
発覚してからというもの、その業績のおかげで、 社長を黙らせる事ができていたが、 こうなると社長も黙ってはいなかった。
チーフミーティングで、私は社長にこっぴどく攻撃された。
当たり前のことである。チーフとしての役割をこれっぽっちも果たせなくなっているのだから。
唯一の幸せであった彼との密会も、前のように頻繁ではなくなっていた。 彼からの誘いは、極端に減った。業績の低下、理性を失った私。
常識で考えれば当たり前のことだが、その頃の私に、それを理解する余裕がなかった。
私を蹴落としたい「心無い人」にとっては、好都合だったであろう。 私は、その「心無い人」の格好の餌食となった。
しかし、これも、全て自分の責任である。 私は、このことに気付けないでいた。
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