今日は一大決心をした。朝からそわそわしていた。 そうだ、去年から考えていた、ある事を実行に移す日がきたのだ。
それは、海に行って、砂にもぐる事であった。
うちにある、自然療法の本にその事は書いてあった。 砂というものは、素晴らしい力があって、 人間の体の中に蓄積された毒素を排出する事が出来る。 それは、ただ、砂の中にもぐっているだけでいいのだと。
海水浴シーズンに、海辺の砂に穴を掘って、その中に入る。 砂に入るには注意が必要だ。 まず、日焼けを防ぐ為に、日よけが必要だ。 ビーチパラソルが必要だし、その上、帽子も必要。 そして、適度な水分をとる。
前々から考えていたわりに、急に実行に移したため、 友達を誘う余裕がなかった。 まぁ、いい。これで自ら実験台となって、具合良さそうなら 今度は誰かを誘おう。そのような、軽い気持ちだった。
でも、いざ海に着いてみると(場所は淡輪海水浴場、 ときめきビーチとも呼ばれている) 海辺は適度に賑わっていた。 この中で、どうやって、一人で砂にもぐればいいのだろう。 だんだん不安になっていった。
不安な中、(主よ、守って下さい)と祈りつつ、 私はちゃくちゃくと、準備を進めた。 まずは、海辺を一周。どこがいいかなぁと考えながら 今度は海に家に行き、ビーチパラソルをレンタル。 パラソルを適当な場所に立ててもらったら、 今度は自分で穴掘り。これがすごく恥ずかしかった。 スコップを持っていくのを忘れたので、ひたすら手で掘った。
ようやく一人もぐれるぐらいの穴が掘れたら、 次はとうとう砂にもぐる事になった。 なるべく人が私をどう思うかとか考えない様にしながら (だって、絶対変な人だと思われるだろうから) がんばってもぐってみた。 そして、一人で一生懸命砂をかけた。 一応、砂もぐりに成功。
そのうち、風が吹いてきて、かぶっていた帽子が飛んでいって しまった。するとどこかのおじさんが、それを 間違えて、隣の高校生のグループの敷物の上においてしまった。 高校生達が後で、海から帰ってきて、 なんだこりゃ?と言いながら騒いでいたので、 「すみません、私のです」と叫んだら、もってきてくれた。 なにしろ、砂にやっともぐれたので、 帽子ぐらいの事で、砂から出る訳にはいかなかったのだ。
高校生達はその後、私の噂を好き放題していた。 「いいよなぁ、あんなふうに俺もリラックスしたいよ」 「うちの親に、隣の人、見せてやりたいよ」 (隣の人とは私の事) 私も自分の事が話題になってるので、気が気でなく、 ゆったり眠るどころではなかった。 それに、だんだん、風がきつくなってきて、 ビーチパラソルが飛ばされる危険も出てきたので、 緊張感いっぱいだった。
どこかのグループも私の事を話題にしていた。 「あんたも、もぐる?」 とか、言い合っていた。
隣の大学生のグループの、浮き輪が私のところまで 飛んできた。 「あ、危ないよ、そこ人が寝てるよ」
5時になると、海の家も閉まる。 ビーチパラソルを返却した後、だんだん 海はすいてきた。 このまま、帰るのもおしい。 だいぶ、体から毒素は出たかなぁ? そう思いながら、もう一度、違う場所に穴を掘って 私はしつっこくもぐっていた。 日がかげってきたので、直射日光もなく、 でも、頭上の空はまだ青く、澄んでいた。 遠くの空は、夕焼けで、きれいに染まっていた。
いろんな人の事を祈っていると幸せな気持ちになった。 祈れる友達がいるってなんて幸せだろう。 その思いで胸がいっぱいになった。 空と、海と、自分が一つになったような、不思議な感覚だった。 ざざっざざっと、波の音に抱かれて、私は時が過ぎるのも 忘れそうだった。たまには、こんなのもいい。 いつも時間に追われて、細切れに行動する癖がついていたけど 心ゆくまで、ゆったりと過ごせるのは素晴らしい事だ。
さて、肝心の毒素はぬけたのだろうか? 私は普段、添加物の入った食品、または、車の排気ガス。 タバコの煙に囲まれて生活している。 (私は車も乗らないし、タバコもすわないが、まわりの人々が 吸うので) そういったものを、砂が吸着して、出してくれるとは なんともありがたい事だと思う。 最初、砂にもぐってすぐに、全身が心臓になったみたいに どくん、どくんと波打っていた。手足全体に、血がゆきめぐって いるようだった。きっと血行が良くなったに違いない。
でも、この砂もぐりは、一人で行くのは、ちょっときつかった。 一人で穴を掘って、もぐるのは、大変だし、 変な人になりきるのも、かなりのストレスだ。 いくら私でも、やっぱり人目は気になる。 今度は、いっしょに行ってくれる人を大募集して 賑やかに行きたいと思う。
この日記を読んで下さったそこのあなたも きっと私の事を「変な子だ」と 思われたに違いない。(−_−)
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