遠くにみえるあの花火に
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2004年11月07日(日) よしもとばなな『海のふた』読了

「海のふた」を読み終えた。

ここ最近のよしもとばななの小説の中で、一番好きかもしれない。
魂とか、精霊とか、よしもとばなな独特の響きを持つ言葉が、
今回もあちらこちらに出てくるのだけれど、
主人公たちが殊更に、特別な力をもっていたり、輝きをもっていたりするのではなく、
当たり前のことを当たり前にやっていこうとするその姿勢が、
なんだか好きだった。

ごくありふれた自然。でも、とても大切にしたいと思える自然の景色。
お金が大好きだと豪語し、でも、たくさんはいらないと語る女の子たち。

そうだよなぁと思う。
私だってそうだよ、と思う。

極端な善や悪を、象徴的に背負って登場してくる人物たちの作り出す物語よりも、
ごくありふれた感謝の気持ちを、生活の中に織り込んで生きている人物たちが作り出す物語の方が、
ぐっと近くに感じられる。

いいバランスだなぁと思った。
よしもとばななの伝えたいメッセージも、ほどよく伝わる非凡さ、あるいは平凡さ。
火傷をおった少女。カキ氷屋を営む少女。
それぞれに特別な力はないけれど、海に感謝したいと思う気持ちはとても大きい。

よしもとばななって、好きだけど、どっぷりはまりこめない、と思っていた。
それは、どこか非現実的、というか、
主人公たちがあまりにも非日常を日常のように受け入れてしまっていることに
馴染めなかったのだ。

でも、「海のふた」はなんだか違った。
非日常と日常とが、うまく溶け合っていた。
なんだかすんなりと、彼女たちのこころざしを受け入れられた。
私もこうあろうと思えた。
そういう、力のある小説だと思う。





「海のふた」と前後して、北村薫さんの「謎物語」を読んでいる。
ミステリーをふだん全く読まないので、ついていけていない。
が、これをきっかけに、ミステリーも読んでみようかと・・考えている。


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