2005年03月08日(火) |
ごわごわした古いセーターの匂い |
うららかな日。
朝から洗濯物を干して、あわてて家を出、
駅のホームに整列し、電車に乗る。
並ばないでわりこんでくるおじさんにイライラしそうになる。
それを心の中で深呼吸してなだめる。
こんな天気のいい日に、イライラするのはばかげている。
磯貝みるめ君とサユリさんの、
古いごわごわしたセーターの匂いみたいな物語に
息が出来ないような気持ちになる。
そしてまた、心打たれながら電車に揺られる。
電車でゆきついた先は私を閉じ込める場所。
あっぷあっぷと溺れそうになりながら、
磯貝君とユリちゃんで、息を継ぐ。
*
救急車の音が聞こえる。
夕闇の美しさに、何度でもみとれて、
うららかな一日の、
ごわごわした古いセーターみたいな感触を呼びもどす。
鉄棒の、鉄くさいにおい。
てのひらにできたマメの黄色い硬さ。
そういった情景が、夕闇の中に見えている。
*
私の手先が器用だったらどれほどよかっただろう。
と、つくづく思う。
爪の先に視線を落として、
きれいに塗れていないマニキュアをじっと見つめる。
*
うららかな一日の終わりに、
洗濯物をとりこむ。
太陽の匂いがするシャツやタオル。
明日もきっと晴れることでしょう。