島本理生さんの「ナラタージュ」を読んでいます。
この人の書く物語は少女漫画のようだなぁと密かに思うのですが、
でもいつも、ひっそりと森の中で息をひそめているような、
しっとりとした濃霧の湿った匂いに似た文体が、なんだか好きなのです。
実際、物語の中には雨やシャワーや、何かしら湿度を連想させる情景が多いような気もする。
体の内側の湿度。
吐く息のあたたかいしめり気。
物語の中は夏だというのに、(いや、日本の夏だからか)
じめじめした湿気が、多く語られている。
いま、半分読んだところ。
本をぱっと開いたときに、その文字のサイズ(小さい)と、薄さ(なんとなくグレーっぽい黒)に驚いて、
島本理生さんらしいような気が、なんだかしたのでした。
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ここしばらく、お仕事が忙しかったのですが、
それが理由で日記を書いていなかったのではなく、
ただ春なので怠け者を再発していただけのような気もします。
昨日は夫のくまたろうに連れられて、夜桜を観に行きました。
ライトアップもまともにはされていないような、小さな町の小さな桜並木だったのですが、
それでも缶ビールを飲みながら夜道をぶらぶらしていると、なんとなく幸福なのでした。
久しぶりに二人きりで居酒屋に入り、ひとしきりしゃべりました。
「三代の松」という名の栗焼酎があったので、珍しいと思いそれを頼みました。
栗、の風味はあるようなないような。
一口目だけ、ほんのり甘みがある気がしましたが、
あとはただ強いお酒だ、という印象でした。
思いの他酔いがまわっていて、二人でちどりながら家路に着きました。
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春の雨のしめり気と匂いがなんだか好きで、
このいい香りのする季節を楽しみながら日々をおくっています。