その人は、高校時代に3ヶ月間だけつきあっていた男の子に似ていた。 同じ陸上部の男の子。 初めての告白から始まった可愛い関係は16歳の私にとっては充分だった。
つきあって3ヶ月ほど経ったある雨の日校舎と食堂を結ぶ渡り廊下に呼び出された。
急な呼び出し。 嫌な予感がしていた。
そしてそれは的中してしまった。
「俺たち別れよう」 「・・・なんで?」 「やっぱり合わないと思う」 「・・・わかった。いままでありがと。」
私はすがったりするのは絶対に嫌だと思ったので、色んな感情を押さえ込んで背を向けて歩き出した。
後ろから「ごめんな!」と周りにも聞こえそうな大きさの声で彼が言った。
それから10数年後。去年のこと。
陸上部の集りに初めて彼がきた。 初めは全く話せなかったが、最後のほう10分くらいだけ話せた。
「今だから聞くけどさ、あの時何でふられたのか今でも解らないんだけど。」 「お、俺が若くて馬鹿だったから。」 「は?」 「つまり、10代の男なんてやりたくてしょうがないんだけど、お前は真面目で誘ったけど拒まれたとき冷めちゃったんだ。」 「誘われた覚えが無い。」 「そうやって気づいてもらえなかったから別れたんだ。」
あの、私はあれから1年近く引きずったんですが・・・・・・。
ああ16歳の私に戻って「泣くな。やらせなかったってだけなんだから。」って肩を抱いてやりたいよ。
東西線の中で見かけた高校生は彼の面影があった。
この子もそんな理由で女の子をふったりするのだろうか。 あれから13年か、と忍び笑いする29歳。
chick me
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