籐のつづらのような箱から 私と妹が子供の頃から母に送ってきたカードや手紙の全てが出てきた。 母の日 誕生日 クリスマス プレゼントをもらった御礼 親子喧嘩をした後のごめんなさいの手紙 果ては「今日は飲み会だからゴハン要らないよ」とか「だれだれちゃんちに行くね」などのメモがきまで。
大切にしてもらってたんだなと 胸が痛くなった。
『親思う心にまさる親心、今日のおとづれ何と 聞くらむ』 月並みだけど吉田松陰の辞世の句が浮かんだ。
私と妹は病気を知らされてからの2年半 その時々でできることを頑張ってしてきたつもりだけど それが母にとって心から満足だったかはわからない。
解からないけれどあの人の子供に産まれて本当によかったと思う。
私が小学生の頃 母に「この詩は大好きだから覚えて」といわれて暗誦した詩がある。
------------- 山のあなた [カール・ブッセ]/上田敏『海潮音』より
山のあなたの空遠く 「幸」住むと人のいふ。 噫、われひとゝ尋めゆきて 涙さしぐみ、かへりきぬ。 山のあなたになほ遠く 「幸」住むと人のいふ -------------
いま 調べて初めて意味を知った。
「幸せは彼方にあると聞き、求めて行ったが、むなしく泣いて帰った。 それでもなお遠くに幸せはある、と人は言う。」
この詩を母はどんな気持ちで私に教えたのだろうか。
chick me
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