雑記目録
高良真常



 悪童日記 (本)

悪童日記
  アゴタ・クリストフ
 早川書房



「ぼくら」は母に連れられて、戦禍を逃れ、祖母の家に預けられる。
祖母は「ぼくら」を決して可愛がらず、必要なものもろくに与えない。
そんな中でも「ぼくら」は生きること、それに必要とされるものを己で習得するために、どれだけ手酷い扱いをされても優しく笑っている。
街へ行く。人々の反応を見る。
ありったけの罵詈雑言を被る。それらに慣れて心の痛みを無くす。
「ぼくら」は己で動き、蓄え、学習する。淡々と。
出来事を日記に綴る。交互に書く。常に一緒に行動している「ぼくら」の日常に、相違は全く無い。



「ぼくら」の綴る日記、それこそがこの本の内容です。
地名も人名も出てこず、見たことだけを書き記す双子の日記には、彼らの心境などは一切書かれておらず、無邪気を越えた空恐ろしさにぞっとする。
淡々としたその語り口の中に、物凄く深い意味を抱えている小説です。

最後でどんでん返しの小説ってのはあるけれど、この本は、“最後の一行”で世界をひっくり返す小説だと思います。あのラストは絶対予想不可能。
一度はこの衝撃を体験あれ。


ちなみにこれは全三部作の第一部に当たる物語で、後に『ふたりの証拠』『第三の嘘』と続きます。
三部作、全てにおいて衝撃を受けた、本当に私の読書人生で一番衝撃的な本です。









2004年08月21日(土)
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